旭酒造記念財団が水環境保全の新たな一歩を踏み出す
2023年春、株式会社獺祭は水や自然環境に関する調査研究と活動に助成を行う一般財団法人「旭酒造記念財団」を設立しました。この財団の目的は、水や自然環境に関する科学的な知識の発展を促進し、豊かな水環境を創出することにあります。2025年度には、公益法人としての認定を受け、さらなる活動を進める方針です。
6月22日、山口県岩国市の獺祭本社において、助成対象者の発表と助成金贈呈式が行われました。今年度は、全体で28件の応募があり、その中には大学院生や若手研究者の受賞も含まれています。助成金は、研究には一件につき最大200万円、活動には最大50万円が予定されており、2025年度の助成金総額は約1,250万円に上ります。
助成金受賞者の紹介
研究部門
1.
槐ちがや(国立研究開発法人土木研究所)
研究題目: 「河川流域内の水生植物の地理的遺伝構造を考慮した効率的な保全策の検討」
研究のモチベーションは、水生植物の遺伝的特性を踏まえた環境保全の重要性にあります。
2.
五十嵐純護(筑波大学)
研究題目: 「マレーシアペナン州における持続可能な流域開発に向けた環境正義の実現」
彼の研究は、国際的な視点での環境問題に焦点を当てています。
3.
中島颯大(北海道立総合研究機構)
研究題目: 「個体群間のつながりを踏まえた環境DNAによる流域の生息地ネットワーク評価」
環境DNAを活用した先進的な研究です。
4.
中村晋一郎(名古屋大学)
研究題目: 「社会水文学による流域治水の統合的評価フレームワークの検討」
流域治水における新たなアプローチを提案します。
5.
野田岳仁(法政大学)
研究題目: 「集落自治を支える小規模水道の政策論」
地域の水道政策における重要な研究です。
活動部門
1.
吉田幸二(水辺基盤協会)
活動題目: 「霞ヶ浦の水辺環境の保全・再生、及び環境学習」
環境保全活動と地域教育の両立を目指します。
2.
吉田貢士(流域ぷらっとフォーム)
活動題目: 「富山県においてすべてのステークホルダーが参画する流域治水の共創の推進」
これにより、地域全体での治水力を高めていく方針です。
旭酒造の理念
株式会社獺祭は、ただ美味しい日本酒を作るだけでなく、社会や環境の持続可能性を意識した哲学を持っています。社長の桜井一宏氏は、「お酒を楽しむためには、まず社会が安定していることが必要」と語ります。また、水環境に対する責任感を持ち、地域の自然を守り、次世代へと繋げることが重要だと強調しています。
同社はこの財団を通じて、国内外の研究者や環境活動家の支援を行うことで、社会全体の持続可能な発展に寄与しようとしています。これは日本酒造りの原点である「水」の大切さを知り、次世代に伝えていく取り組みでもあります。水環境に関する問題は、我々全てが向き合うべきものです。新たに設立された旭酒造記念財団は、この課題に取り組むための第一歩とも言えるでしょう。
未来への期待
助成金を受けた研究や活動が、どのように水環境の改善に貢献していくのか、大いに期待されます。そして、この動きが他の企業や団体にも波及していくことを願っています。確かな知識と実践をもって、私たちの社会と自然環境を守っていくことが目指されています。