「お福と八福神」:奇跡の物語が紡ぎ出す、愛とユーモアに満ちた珠玉の映画
カンヌ国際映画祭に幾度もノミネートされ、チェルシー映画祭でBEST ACTRESS賞を受賞した話題のショートムービーシリーズ「OFUKU THE MOVIE」。その第6弾となる『お福と八福神』がいよいよ公開を迎えます。
今作は、これまでのショートムービーを繋ぎ合わせたような、長編オムニバス形式。370年以上前の江戸時代から現代日本にタイムスリップしてきたお福が、亡き母の面影を求め、日本各地を旅する物語です。持ち前の「おせっかい」精神で、出会う人々の心を温め、笑顔に導いていくお福ですが、今回は愛媛県を起点に、ロサンゼルス、サンタモニカへと旅の範囲を広げます。
母への想いを胸に、愛媛からロサンゼルスへ
物語の始まりは、明暦の大火で母と離別した6歳のお福が、悲しみに暮れるシーン。いつも明るく、コミカルな姿を見せてきたお福ですが、今回は、母への深い悲しみから物語が展開していきます。
お福が探し求めるのは、母が残した「お福早く行きな、生きて、必ず会えるから、必ず」という言葉。その言葉は、七福神信仰の教え「七難即滅、七福即生」に通じるものがあります。
七難とは、人生で訪れる七種の災難。江戸の大火で母と離別したお福は、母との再会を願いながら、長い年月を生きてきました。そして、七福神信仰に「於福(おふく)」を加えた「八福神信仰」が生まれたように、お福自身も、人々との「縁」をつむぎ、福を運ぶ存在として物語を彩ります。
サックス奏者デビッドの苦悩と、お福の支え
今作の主人公は、プロのサックス奏者として日本に滞在しているデビッド。デビッドは、祖母を亡くし、母の期待に応えられない苦しみを抱えています。アメリカ・サンタモニカに住む母キャサリンは、デビッドに家業を継いでほしいと懇願しますが、デビッドはそれを拒み、母から逃げ続けています。
そんなデビッドを支えるのが、お福です。デビッドの目標は、祖母と母を繋ぐ「hachifukujin」という名の食べ物を探し求めること。そのために、和食のシェフとなり、さらには日本で結婚して、日本人のお嫁さんを連れて帰国することを決意します。
映画製作の裏側:素人が紡ぎ出す本質
監督・脚本・演出を務めるのは、阿久津五代子氏。阿久津氏は、「一瞬一瞬の美しさを切り取り、絵本をめくるような映画にしたい」という思いを込めて、映画製作に取り組んでいます。
阿久津氏には、ユニークなこだわりがあります。それは、「プロの役者は起用しない」「練習はしない」という点です。
「キャストもスタッフもほとんどが社内の司会者や音響スタッフです。脚本の本読みの練習も台詞合わせもしません。全ては1週間程度の撮影当日に現場に合わせて即興を楽しみながら行います。芝居をしたことのない素人がふとみせる本質を引き出したいからです。」
実際、主人公のデビッド役は、日本で活躍するサックスフォーンフレイヤ―であり、ハセガワエスティの音楽奏者でもあります。あくまでもウエディング業界の司会業という本業をベースに映画製作が行われているため、出演者全員が映画という枠組みの中で、最大限に楽しんでいる様子が伝わってきます。
愛媛の魅力が詰まった、美しい映像
映画の舞台となる愛媛県は、豊かな自然と伝統文化が息づく場所です。地元の名産品や工芸、来島海峡、西条のだんじり祭りなど、美しい風景が数多く登場します。
経済産業省の補助金も獲得
本作は、経済産業省が公募した「特定生活関連サービスインバウンド 需要創出促進・基盤強化事業費補助金」に採択され、制作費の一部に充てられました。
「少子化、インバウンド、国際結婚」をキーワードに、映画を通して地域の魅力を発信していくことが目的です。
お福は、きっとこう言うでしょう。「この福にあやかろうと、この映画を観に足を運ぶ=喜捨する心意気のある人こそ、『8番目の福神です』と。」
『お福と八福神』は、愛とユーモアに満ちた、心温まる奇跡の物語。ぜひ劇場で、お福とデビッドの冒険を体感してください。