小泉八雲を題材にした新作小説『黒い蜻蛉』発表会
2024年8月に発売予定の伝記小説『黒い蜻蛉──小説 小泉八雲──』に関する記者会見が、駐日アイルランド大使公邸で開催されました。この日、著者でありアイルランド出身のジーン・パスリー氏、翻訳者の小宮由氏、そして小泉八雲記念館の館長である小泉凡氏が登壇しました。
本書は、パスリー氏が2021年に発表した『Black Dragonfly』の邦訳版であり、ラフカディオ・ハーンが日本でもっとも重要な存在となった時期に焦点を当てています。八雲は、日本文化を西洋に紹介した重要な人物であるだけでなく、彼自身が異国の地で抱えた心理的葛藤を描き出した作家でもあります。
会見の様子
冒頭、駐日アイルランド大使のデミアン・コール氏が、パスリー氏とその関係者に対して、文化交流の架け橋としての役割を讃えました。アイルランドと日本とを繋ぐ文学的な試みは両国にとって貴重な意義を持つものであり、会場の雰囲気も非常に温かく、文学界の新たな展望を感じさせるものでした。
続いて、パスリー氏は自身の日本での経験を語り、「異国の地での孤独感はあったが、日本の美しさに魅了され続けた」と述べ、自らの作品がどのようにして日本文化に影響を受けているかを熱く語りました。彼のスピーチには、文学を通じた国境を越えた感動的な出会いが表れていました。
翻訳者の小宮由氏は、翻訳作業の過程とその魅力について説明しました。彼女は、八雲の作品を通じて日本人が持つ独特の精神性や生活様式が再評価されることの重要性を強調しました。このプロジェクトは、彼女にとって初の翻訳小説であり、特別な意味を持ちます。
そして、小泉八雲記念館の館長で小泉のひ孫にあたる小泉凡氏が壇上に上がり、パスリー氏への感謝の言葉と共に、彼が即席で寄稿した帯文を読み上げました。彼の発言は、八雲への敬意が溢れるものであり、文学の持つ力について再確認させるものがありました。
質疑応答とフォトセッション
質疑応答では、記者たちが本書の内容や明治期の松江市街の描写に関する質問を投げかけました。それに対し、パスリー氏や他の登壇者が活発に応じ、会場は和気あいあいとした雰囲気に包まれました。特に、八雲がどのように日本文化に影響を受け、そして自身の創作にどのように生かしたのかを深く掘り下げる質問が続出しました。
最後に行われたフォトセッションでは、登壇者たちが本書を手に撮影に参加し、和やかな空気の中で会見は締めくくられました。この会見は、文学を通じて国際的な文化交流が進む中で、八雲の再評価が一層進むことを期待させるものでした。
本書『黒い蜻蛉──小説 小泉八雲──』は、2024年8月30日に発売される予定です。価格は2,750円(税込)で、344ページの内容となっています。八雲の人生と作品を深く掘り下げたこの小説が、多くの読者に感動を与えることを期待しています。