八丈島で実現、植物由来の新しい外来アリ防除技術の開発
最近、東京都立大学の研究チームが植物由来の生分解性ハイドロゲルベイト剤を用いた新しい外来アリ防除技術を開発しました。この研究は、外来種であるアシジロヒラフシアリの防除を目指しており、地元住民が参加する防除プログラムとして注目を集めています。
生分解性ハイドロゲルベイト剤の開発の背景
日本各地で問題視される外来アリの一種であるアシジロヒラフシアリ(学名:Technomyrmex brunneus)は、近年、特に八丈島での被害が顕著です。このアリは元々東南アジアに分布しており、人為的移入の結果、日本に定着したと考えられています。
そのため、2020年から、東京都立大学の江口准教授や寺山客員研究員を中心に、八丈町のアシジロヒラフシアリ対策プロジェクトが始まりました。
植物由来の新素材MFCを使用
研究チームは、植物由来の微細繊維状セルロース(MFC)をゲル化剤として利用し、生分解性のハイドロゲルベイト剤を新たに開発しました。このMFCは生分解性に優れ、水分を保持する特性があります。
これにより、以前実用化された合成樹脂製のベイト剤と同様の効果が期待され、実際に外来アリの防除に成功したストーリーがあります。
分解性と環境負荷の軽減
生分解性MFCハイドロゲルベイト剤は、設置後の環境への残留を心配する必要がなく、持続可能な防除ツールとして期待が寄せられています。八丈島では、この新剤を用いて集落内のアシジロヒラフシアリ数を90%以上も減少させたことが確認されました。この結果は、地域住民が積極的に参加する防除プログラムの成功をもたらし、今後の取り組みの参考となっています。
研究結果の利点と今後の展望
本研究の成果により、地元住民が簡単に行える防除プログラムが実現しました。目下、全世帯の約60%が参加しているこの防除の取り組みは、八丈島における外来アリ対策を革新するものです。
また、今後は生分解性MFCハイドロゲルベイト剤が在来生態系に影響を与えないよう、毒性の低い成分の選定や誤食を防ぐ方法の開発が求められます。
環境に配慮した防除方法の模索
八丈島での成功体験をもとに、他の地域でも応用できる防除手法が浮上しています。アシジロヒラフシアリは他の地域にも広がりつつあり、環境負荷の小さい防除方法が求められています。
特に、世界自然遺産に指定された小笠原諸島の防除方法としてもMFCハイドロゲルベイト剤は注目されています。
そのため、今後の研究に期待が寄せられています。
結論
外来アリ類の防除は困難を伴いますが、今回の研究結果は、植物由来の新素材を活用した防除手法の可能性を示しており、持続可能な方法としての広がりも期待されます。
八丈島の住民と研究者が協力して取り組むことで、環境に優しいアリ防除の未来が開かれるでしょう。