特攻隊の真実を追い求めた道脇紗知さんの物語
福島県いわき市に住む主婦、道脇紗知さん(45)が、戦後79年前のある出来事に焦点を当てた文庫本『8月15日の特攻隊員』を発表しました。この本は、いわき市に住む彼女の曾祖父の弟が参加した通称「宇垣特攻」をテーマにしています。1945年8月15日の玉音放送後、特攻機が沖縄に向けて飛び立ったその背後に隠された物語を掘り下げています。
道脇さんがこの執筆に踏み切ったのは、戦争体験を語る人々が少なくなっている現状を危惧したからです。彼女の「おじいちゃん」が戦死したことを知るきっかけとなったのは、親族の葬儀でした。それから彼女の心には、戦争の記憶を永続的に残しておきたいという思いが息づき始めました。
執筆のための調査活動は、2年半もの歳月をかけて実施されました。道脇さんは大学で事務補佐員として働きながら、休日を利用して取材を続けました。出した手紙は300通を超え、全国各地で30人以上の関係者から話を聞き出しました。この膨大な情報収集はおじいちゃんを中心にどういった部隊が形成され、何を体験したかを正確に描写するためでした。
本書では、道脇さんが特攻隊についての詳細なリサーチを行い、防衛省や特攻から唯一帰還した方々への聞き取りも交えています。また、戦後ずっといわき市で待ち続けた許嫁のエピソードも取り入れ、特攻隊員一人ひとりの人間ドラマを浮き彫りにしました。
道脇さんは、特攻隊の存在を知ってもらい、若者たちの生き様に思いを馳せてほしいと語っています。「文庫として出版されるとは思っていなかったので、本当に嬉しいです。彼らの歴史を知ることで、平和を考えるきっかけになれば」と意気込みを語ります。
この書籍は、いわき市内の主要書店で販売され、特設コーナーも設けられるなど多くの方に手に取ってもらう機会が増えています。定価は1080円で、初版は2007年に新潮社から発行されていましたが、今回の文庫化によって新しい世代へのメッセージが再び届けられることとなりました。この機会に、道脇さんの切実な探求を通じて、戦争の記憶と思いを深めてみてはいかがでしょうか。