田中准教授の研究が明かす食料供給の安定化への新たな視点

明治学院大学経済学部の田中鉄二准教授が発表した新たな研究は、地球規模での食料供給を安定化させる方法を示唆しています。彼の研究は、衛星画像からの収穫予測情報と北半球・南半球の季節性の違いを利用し、国際農産物市場の安定化に寄与する可能性を探るものです。この提案は、気候変動や地域紛争に直面する今日の食糧安全保障の脅威に対抗する一助とすることを目指しています。

研究の背景

近年、気候変動が進行する中、農産物の生産性の変動はグローバルな市場に大きな影響を及ぼしています。特に、農産物の輸出大国における不作や豊作の情報が、輸入国の市場価格にどのように影響を与えるかを理解することが、今後の持続可能な食料供給を確保する上で重要です。田中准教授の研究は、過去のデータをもとに、早期の収穫予測情報がいかに市場を安定させるかを示しています。

研究の方法と成果

本研究では、2008年と2012年のロシア・ウクライナにおける小麦の豊作と不作、及びブラジルでの大豆の不作を事例として取り上げ、経済モデルを用いて分析しました。もし衛星から得られる収穫予測情報が農家に早期に伝達されれば、北半球の農家は南半球の農家からの支援を受けながら市場価格を安定化させることができるかもしれません。具体的には、ロシアやウクライナでの小麦の不作により、輸入国の価格は最大で9.3%上昇し、豊作の場合には12.6%も下落する効果が見られました。また、ブラジルでの不作は、大豆価格を7.3%から22.3%引き下げることが確認され、全体として世界の供給量も変動することが実証されました。