成蹊大学と西武鉄道、SDGs11に向けた産学共同研究の進展
成蹊大学(東京都武蔵野市)と西武鉄道(埼玉県所沢市)は、持続可能な開発目標(SDGs)の一環として、住み続けられるまちづくりを目指す共同研究を実施しています。2030年を見据えたこの取り組みの中で、駅ナカ店舗での購買行動についての実証研究が2024年度からスタートしました。
研究の目的と背景
この研究は国連が定めたSDGsの一つである「SDGs11:住み続けられるまちづくり」に基づいて進められており、特に駅構内での消費行動に着目しています。鉄道利用者がどのような購買行動を示すのかを分析し、その結果を持続可能なまちづくりに生かすことが目的です。成蹊大学の経済学部教授、永野護氏がプロジェクトリーダーを務めています。
研究の方法と行った分析
この共同研究においては、西武鉄道の41駅を対象にして、乗降者数や駅ナカ店舗の売上データ、気象条件など多角的なデータを収集・分析しました。具体的には、2023年の1年間で以下のデータを元に研究が行われました。
- - 西武鉄道の乗降者数
- - 駅構内の32商品に関する売上数量と単価
- - 天候や温度、湿度に関する情報
- - 駅周辺の競合店舗数
主な分析結果
実証研究の結果、以下のような発見がありました。
1.
駅利用と販売数の関係
改札外の店舗では、乗降者数の増加がほぼすべての商品に対してプラス影響を及ぼす一方、改札内の店舗は限られた商品にしか影響が出ないことがわかりました。ただし、その影響は改札外よりも大きいとの結果も出ています。
2.
価格引き下げがもたらす影響
価格のディスカウントは乗降者数の増加に比べ、その販売数には小さな影響しか与えないとのことです。改札内外ともに、価格引き下げが効果的な商品は限られています。
3.
気象条件の影響
気温の変化が特定の商品に売上の増減をもたらすことが確認され、気温が1℃上がることで売上が増加する商品もあれば、逆に減少する商品も存在しました。
湿度の上昇は多くの商品に売上減少をもたらすことが示されました。
4.
競合店舗との影響関係
改札内では競合店舗の数量が売上に影響を及ぼす商品は限られていますが、改札外では多くの商品が競合の影響を受けています。これにより、駅周辺の小売環境も重要であるということが浮かび上がりました。
今後への展望
この研究は、SDGs11の実現に向けた重要な一歩です。持続可能なまちづくりへの寄与は、駅周辺の消費行動の理解を深めることで、地域経済の活性化にもつながります。今後の研究では、乗降者数や天候といったデータをさらに精査し、持続可能な都市形成における戦略的な提言を行う予定です。成蹊大学と西武鉄道の取り組みが、今後どのように社会に貢献していくのかが期待されます。