AIの進化による地政学変革とサイバーセキュリティの重要性

AIの進化と地政学の変化

2023年10月、IEEEが主催したプレスセミナーにおいて、九州大学の櫻井幸一教授が「AIの進化と脅威」で講演を行いました。フォーカスは、AIがどのように地政学やサイバーセキュリティに影響を与えているのか、そしてその未来への展望です。

サイバーセキュリティの現状

櫻井教授は、AIが主役となる時代において、サイバーセキュリティの重要性が増していると指摘しました。従来、人間によって引き起こされていた問題がAIの進化によって変化し、サイバー攻撃がより巧妙かつ組織化されつつあると警告しました。

ハッカーの脅威

教授は、特に「ゼロデイ攻撃」と呼ばれる未知の脆弱性を狙った脅威について言及しました。AIの内部動作が未解明であるため、悪用される可能性が高まっていると言います。このような脅威に対する防御策の必要性を強調しました。

AIの作用と影響

教授はまた、AIがさまざまな学術団体や研究コミュニティに与える影響についても考察しました。AIにはその利点とともにリスクもあり、特に選挙や社会活動において不正行為を助長する可能性があることを警告しています。

さらに、最近の国際的な動向として、米国が発表したAI行動計画に言及しました。これはイノベーションの加速、AIインフラの構築、国際外交と安全保障の強化を目指しています。

一方、中国でも「AIプラス」の施策が発表され、2035年までの具体的な目標が設定されています。櫻井教授は、この動きをAIとIoTの融合による社会構造の変革と関連付けて論じました。

欧州の動きと規制

また、欧州が新たに導入を検討しているAI法についても触れ、その目的は透明性、著作権、安全性の確保です。この規制は2027年以降、既存のビジネスモデルにも適用されると予想されています。このような規制は、日本の企業にも影響を及ぼすことが懸念されています。

情報の重要性

元外交官である宮家邦彦氏の著書『AI時代の新・地政学』の内容にも触れ、これからの時代において情報や技術が物理的領土よりも重要視されると述べました。AIが国家間の距離感を変え、政治的な力関係にも影響を及ぼす可能性があります。

研究者の観点

櫻井教授は、さまざまな最新の研究結果も紹介しました。たとえば、AIを利用することで人間の批判的思考力が減少する可能性が示唆された研究や、悪用される危険性に関する事例が挙げられました。AIが生成した情報が事実に基づかない場合もあり、メディアにおける扱いには注意が必要です。

国際的な動向と日本

日本においても、AIとサイバーセキュリティは国際政治の一部となってきています。櫻井教授は、サイバー攻撃がビジネスモデル化しており、サイバー攻撃の傭兵の存在についても言及しました。

最後に、櫻井教授はAIの可能性を信じつつ、その限界についても明言しました。AIは人間並みの予測ができない現状があり、この限界をいかに克服するかが今後の重要課題であると締めくくりました。