CHRO100人調査:人的資本経営の現状と課題
日本経済新聞社とワークス・ジャパンが共同で実施した「CHRO100人調査~人的資本経営の実現に向けて」の結果が発表されました。東証プライム上場企業や従業員1000名以上の企業の最高人事責任者(CHRO)や人事担当役員108名を対象としたこの調査では、人的資本経営推進における現状と課題が浮き彫りになっています。
経営と人事戦略の同期化:進展と課題
調査によると、経営戦略と人事戦略の同期化は一定の進展を見せており、回答者の64%が両者の同期ができていると感じていると回答しました。しかしながら、この同期化が従業員にまで十分に浸透しているとは言い切れない状況が明らかになりました。
人事戦略を十分に理解していないと感じる層について尋ねたところ、「その他従業員」が58%と最も多く、人事部門以外の従業員の間では、人事戦略の理解が十分に進んでいるとは言えない状況が示唆されました。さらに、「社内の他のCxO」も37%が理解不足だと感じており、経営層を含め、社内全体での人事戦略の共有に課題があることが分かります。
人材育成:可視化の遅れと課題
経営人材候補の育成施策についても、課題が指摘されています。育成施策の結果を可視化できていると回答した企業はわずか26%にとどまりました。これは、人材育成の成果を客観的に評価し、改善につなげる体制が十分に整っていないことを示唆しています。
また、「次世代リーダー候補者を選抜する上での課題」として、「素養の見極め」が58%と最も多く挙げられました。その他、「外部からの適任者の採用」や「候補者の見直し・入れ替え」といった課題も指摘されており、人材育成における戦略と実行の両面で改善の余地があることが示されています。
優秀な人材の定義:多様な視点
調査では、優秀な人材の定義についても自由回答で調査が行われました。その結果、「異なる価値観に対して答えを導き出せる力」「企業の付加価値を向上する力」「論理的思考力と洞察力」「決断力と胆力」など、10種類以上の多様な回答が寄せられました。このことは、企業における優秀な人材像が多様化し、従来の評価基準の見直しが必要となっていることを示唆しています。
まとめ:人的資本経営推進に向けた提言
今回の調査は、大手企業において人的資本経営が積極的に推進されている一方で、従業員への戦略浸透や人材育成、優秀な人材の定義など、多くの課題が依然として残されていることを明らかにしました。日本経済新聞社は、この調査結果を基に、産業界の人材育成・採用、組織開発支援に役立てていくとしています。今後、これらの課題に対する具体的な対策と、その効果測定が重要となるでしょう。企業は、従業員一人ひとりの成長を支援し、企業全体の成長につなげるための戦略を策定し、実行していく必要があります。