新たな歩行リハビリ「FAST walk」で脳卒中患者の可能性を拓く
脳卒中は日本において主要な死因の一つであり、多くの患者が後遺症に苦しんでいます。特に、歩行障害は患者にとって大きな悩みの種です。そんな中、順天堂大学大学院医学研究科リハビリテーション医学の藤原俊之教授を中心とする研究グループは、新たな歩行リハビリテーション法「FAST walk」を開発し、その成果を発表しました。このリハビリテーション法は、慢性期脳卒中患者の歩行速度を改善する効果を示すものです。
FAST walkの概要
FAST walkは、脊髄と股関節の神経を刺激することで、患者の「歩きたい」という意欲に基づいて歩行をサポートするシステムです。患者の筋肉の動きに反応する筋電センサーを使用し、歩行のタイミングやスピードを調整することで、より自然な歩行を促進します。この新しいアプローチにより、患者は自分のペースで歩行訓練を受けることが可能となります。
研究の成果
本研究では、慢性期の脳卒中患者20名に対し、FAST walkを用いたグループ、従来の脊髄刺激を用いたグループ、そしてトレッドミルでの歩行訓練のみを受けるグループの3つに分かれて、それぞれ10回の訓練セッションが行われました。その結果、FAST walkグループの患者は、訓練後および訓練4週間後において、10メートルの歩行時間が有意に短縮されるという結果が得られました。これに対して、他の2つのグループでは同様の効果は見られませんでした。
歩行障害改善への期待
この研究から得られた成果は、慢性期の脳卒中患者が抱える歩行障害を改善する新たなリハビリテーション治療法としての可能性を示しています。特に、従来のリハビリでは回復が難しいとされていた患者たちに新たな希望をもたらすものとなります。今後、FAST walkの製品化と薬事承認を目指し、多くの患者に届けられることが期待されています。
研究チームの意気込み
藤原教授は、「常に障害の機能回復を目指す新しい治療法の開発を行ってきた。今回の研究成果を基に、製品化と臨床導入を進め、多くの患者さんにこの治療法を提供できるようにしていきたい」と話しています。このような研究の進展が、脳卒中患者の生活向上につながることを願っています。
論文の公開
本研究の詳細は、Journal of NeuroEngineering and Rehabilitationのオンライン版にて2025年7月7日に発表される予定です。論文では、筋電図トリガーによる脊髄刺激や股関節刺激法に関する具体的なデータが示され、今後の治療法開発に大きな影響を与えることでしょう。
本研究は、歩行障害を抱える多くの患者に向けた明るい未来を切り開く可能性を秘めており、医学界だけでなく、一般社会においても注目されることでしょう。