サツマイモの未来を切り拓く
近年、サツマイモの生産量が減少している背景には、基腐病という深刻な病気の影響があります。この病気は、サツマイモが感染する糸状菌によるもので、土地の生育環境を悪化させることが多く、2018年以前と比べて約10%の減少が見られます。
そこで、国立大学法人東京農工大学とサントリーホールディングス株式会社が共同で取り組むのが、再生農業の手法を用いたサツマイモの栽培実証です。このプロジェクトは、鹿児島県内の生産者と協力して行われ、5月から始まりました。
再生農業とは
再生農業は、土壌の健全性や生物多様性を維持しながら、農家の生活向上にも寄与する持続可能な農業アプローチです。具体的には、化学肥料や農薬の使用を抑え、環境への負荷を軽減しながら、農作物の生育を支援します。
研究内容と実施方法
このプロジェクトの中心となるのは、サツマイモの収穫量を増加させ、安定させることです。そこで、農工大学は、土壌環境や土壌微生物に関する技術を提供し、サントリーは、緑肥やバイオ炭の資材を調達するといった役割分担がなされています。
具体的な方法としては、緑肥やバイオ炭を農地に加えて耕すことで、土壌の改善を図ることが挙げられます。このアプローチにより、土壌の健全性が向上し、病害に対する抵抗力が高まります。さらに、これまでの農法に比べ、化学肥料の使用が50%削減されることが期待されています。
実証期間と今後の展望
今回の実証栽培は2027年末までの3年間にわたって行われる予定で、サツマイモの収穫量を病害発生以前の水準まで引き戻し、安定した供給体制を確立することを目指しています。特に、日本特有の環境条件に適した再生農業手法の確立は、今後の農業にとって重要な役割を果たすことでしょう。
また、期待される成果の一つとして、温室効果ガス(GHG)の排出量が30%以上削減される可能性もあります。これは、サステナブルな農業を目指す上で非常に意味のある取り組みです。
お問い合わせ
本研究に関する問い合わせは、東京農工大学大学院グローバルイノベーション研究院の杉原教授まで。土壌環境についての知見を深めるとともに、持続可能な農業の実現に貢献するための技術を提供しています。興味のある方は、ぜひ連絡を取ってみてはいかがでしょうか。