医療安全講習の未受講問題
株式会社MediCEが行った調査によると、全国の診療所で働く看護師や医療事務、技師など医師以外のスタッフの約60%が、法令で義務化されている医療安全講習を受講していないことが明らかになりました。さらに、医療安全指針を知らないと回答した職員はおおよそ70%に達しており、これは非常に深刻な状況を示しています。
調査の背景
この調査は、2025年に行われたもので、全国の診療所に勤務する230名のスタッフから有効な回答を得ました。医療法においては、医療安全管理指針の策定や職員への年2回以上の研修が義務付けられています。しかし、現場での研修や指針の周知が十分に行われていないことが、今回の調査で浮き彫りとなりました。
調査結果の詳細
医療安全講習の実施状況
- - 「実施されていない/年2回の実施はない」:59.5%
- - 「実務に役立った」:16.5%
この結果から、約6割のスタッフが医療安全講習を全く受けていないか、年2回の義務が果たされていない実態が示されています。
指針の認知状況
- - 医療安全管理指針「見たことがない」:70.9%
- - 医薬品業務手順書「見たことがない」:76.1%
このように、多くのスタッフが医療安全に関する基本的な知識を持たない状況が明らかになりました。
インシデントレポートの運用状況
- - 「運用しており、改善にも活かされている」:17.4%
- - 「運用してない」「実施にはほとんど提出されていない」:53.9%
インシデントレポートの運用も極めて不十分であり、実際の医療現場での改善活動が行われていないことが把握されました。
医療安全文化の重要性
調査結果からは、医療安全文化を醸成する必要性が強調されました。理想的な医療安全文化の条件として、多くのスタッフが「ミスが起きても責めずに改善に向けた建設的な対応が行われる」ことを求めているという意見が多数寄せられました。これにより、スタッフが安心して業務に取り組むことができる環境を整えることが求められています。
課題と今後の展望
医療安全の確立は、まず管理者がしっかりとした制度を整備することから始まります。医療法に基づき、指針の策定や職員研修の実施が徹底されることが第一歩です。その後、スタッフが安心して意見を出せるような環境を整えることが次の課題となります。制度と文化の両方が相互に作用しながら、医療安全が実効性を持つようになることが重要です。
まとめ
診療所における医療安全の実態は、依然として厳しい状況にあります。法令に基づく講習や指針の整備が不十分であるため、今後は管理者の意識改革と制度の改善が急務です。医療スタッフが安全に業務を行えるようにするためには、医療安全文化の醸成と制度の実効性が必要不可欠です。