大日本印刷とScope3、環境配慮型デジタル広告サービスの新時代
大日本印刷株式会社(DNP)とアメリカに本社を置くScope3社が協力し、環境に優しいデジタル広告サービスを展開することが発表されました。2025年7月の提供開始を目指して、CO₂排出量を測定し、削減に寄与できる独自の手法を取り入れた新サービスが登場します。
サービス開始の背景
近年、デジタル広告はその普及に伴い、コンテンツ配信サーバーの運用やデータ通信にかかるエネルギー消費が大きな問題となっています。そして、このエネルギー消費は温室効果ガス(GHG)の排出に直結し、企業の環境に対する責任はますます重くなっています。DNPは、こうした現状を受け、「DNP GreenAD」という環境配慮型デジタル広告を既に提供しており、今後はScope3社との連携を通じて、そのサービスの幅をさらに広げようとしています。
トライアル運用の成功
初めての試みとして、2025年5月16日から6月15日の間、生活協同組合連合会であるコープ東北において、デジタル広告のトライアル運用を実施しました。DNPは、昨年の広告配信と同条件で広告を配信し、その結果、驚異的な87%のCO₂排出削減を達成し、広告効果も向上しました。具体的には、広告表示1,000回あたりのCO₂排出量を比較した結果、CTR(クリック率)は21%向上し、CPA(Cost Per Acquisition)は23%減少しました。
この成功は、広告の枠選定や効率的な配信により、環境とビジネスの両立を実現できることを示しています。
Scope3社との連携による新機能
Scope3社とのパートナーシップによって、DNPは「Custom Carbon Algorithm」と「GMP+」という新しいツールを導入します。これらは、広告の配信に必要な電力消費をリアルタイムで解析し、効率的な配信方法を選定することを可能にします。
- - Custom Carbon Algorithm:広告の内容に応じて、高エネルギー消費の工程を特定し、最適な配信方法を選び出します。
- - GMP+:CO₂排出量が多い広告枠を避けて、より環境にやさしい配信を実現。他の広告に比べて効果的な形式を選出します。
このようにDNPは、デジタル広告の持つパフォーマンス向上を目指しつつ、環境への配慮を忘れない取り組みを続けています。
環境意識の高まり
デジタル広告の持続可能性について、DNPの情報イノベーション事業部の井澤賢一氏は、「顧客のデジタル広告配信の改善に向け、無駄を省きつつ、CO₂の削減を行い、持続可能なマーケティングを支援することが私たちの目標です」と語りました。またScope3社のアジア太平洋責任者であるJune Cheung氏も「デジタル広告と排出量データの統合により、効率的な広告運用が実現できる」と述べ、両社の連携が今後の広告業界の変革に寄与することを示唆しています。
今後の展開
DNPは2030年度までに、Scope3社と提携したこの新サービスを通じて50億円の売上を目指し、さらなる機能の拡充を目指します。広告主のニーズに応じた多様なデジタル広告の提供を心がけ、持続可能なマーケティング施策の開発に努めるでしょう。
この新たな試みは、企業が環境問題に対してどのように取り組むべきかの一つの道しるべとなることでしょう。持続可能な未来を目指す世界で、DNPの挑戦から目が離せません。