治験デジタル化に向けた新たな取り組み
富士通が、新しい治験のデジタル化に向けた取り組みを開始します。未承認の医薬品が多数存在する日本の医療環境において、国際共同治験を日本に誘致するための新たなエコシステムを構築するプロジェクトです。
医療データを活用した治験の加速
このプロジェクトは、富士通の「Fujitsu Uvance」プログラムの一部であり、ウェルビーイングの向上を目指す「Healthy Living」を基盤にしています。特に、海外で承認を受けた新薬が日本市場に入ることができず、ドラッグ・ロスが問題視される中、製薬企業や医療機関と連携して、治験における医療データの活用を推進していきます。
最近、富士通はアメリカのスタートアップParadigm Health, Inc.との戦略的パートナーシップ契約を締結しました。この提携により、Paradigmが提供する治験プラットフォームと富士通の医療データ活用基盤「Healthy Living Platform」およびAIサービス「Fujitsu Kozuchi」が連動し、医療機関からのデータ収集や加工を効率化することが期待されています。
新規オファリング「Patient-centric Clinical Trials」の開始
将来的には、治験計画の段階だけでなく、実行段階まで包括的にサポートする体制を整える予定です。2024年8月26日には、当社の大規模言語モデル(LLM)を活用した治験文書の自動作成サービス「Patient-centric Clinical Trials」を提供開始する予定です。
このオファリングにより、製薬企業が必要とする膨大な治験関連のドキュメントを自動生成し、作成にかかる時間を約50%削減できる見通しです。現在、手作業で作成されているドキュメントの多くを、富士通の最新技術によって効率よく扱える環境が整備されようとしています。
ドラッグ・ロス解消への道
日本では、患者が複数の病院に散らばっているため、治験を行うためには多大な時間とコストがかかります。さらに、日本の薬価抑制策も影響し、国際共同治験で日本が除外されるケースが増加しています。その結果、海外で承認された新薬は日本市場で未承認のものが143品目に達しています。
これらの課題を解決するため、富士通はParadigmの豊富な経験と実績を活用し、医療機関と製薬企業を繋ぐプラットフォームを整備していきます。これによって日本における治験環境をモダナイゼーションし、ドラッグ・ロスを解消することが狙いです。
未来に向けた展望
今後、富士通は新たなパートナーシップを構築し、どの段階でも治験プロセスを支えるサービスを広げていきます。最終的には、患者が必要な医薬品に早その恩恵を得られ、自分に最適な治療を選択できるような社会の実現に寄与することを目指しています。
【Paradigm Health, Inc.のコメント】
CEOのケント・トールケ氏は、「Paradigmは、富士通との連携によって日本の治験業務が効率化され、患者の選択肢が増えることを非常に楽しみにしています」と述べており、両社の取り組みが今後の医薬品開発に大きく寄与することが期待されています。
私たちの取り組みは、医療データを活用して新たな価値を創造し、すべての人々が自分らしい生き方を選べる社会の実現に向けて着実に進んでいます。