カラオケボックスから航空燃料へ
2025年10月1日、株式会社第一興商、日揮ホールディングス株式会社、株式会社レボインターナショナル、合同会社サファイア・スカイ・エナジーの4社が基本合意書を締結し、廃食用油を国産の持続可能な航空燃料SAF(Sustainable Aviation Fuel)の原料として供給する新たな取り組みが始まります。このプロジェクトは、カラオケボックスなどから発生する廃食用油をリサイクルし、航空燃料として再利用できるという画期的なものです。
プロジェクトの背景
第一興商は全国700以上の店舗を展開するカラオケ・飲食店運営の大手で、これまでにも多様な用途に廃食用油をリサイクルしてきました。具体的には、ばいおディーゼル燃料や家畜用飼料、ハンドソープなどに再利用されてきました。しかし、持続可能な社会の実現に向け、従来の再利用方法だけでなく、新たにSAFの製造への参加を決定しました。
第1段階として、第一興商が運営するビッグエコー224店舗および飲食店143店舗から廃食用油を収集し、これをSAFの原料として提供していく計画です。それに続き、グループ会社の店舗でも順次対応を進め、全国規模での資源循環に貢献しようとしています。
各社の役割
今回の基本合意書に基づいて、各社にはそれぞれの役割があります。第一興商はカラオケ・飲食店舗から廃食用油を回収し、レボインターナショナルに引き渡します。このレボインターナショナルは受け取った廃食用油をサファイア・スカイ・エナジーに運び、国産SAFを製造するために必要な原料とします。最後に日揮HDは、そのプロジェクトを主導し、SAF製造のフローを整備していく役割を担います。
持続可能な航空燃料SAFの重要性
SAFは従来の航空燃料と比べてCO2排出量を大幅に削減することが可能です。自動車などと異なり、航空機は電気や水素などの代替燃料への移行が難しいため、SAFの利用が不可欠とされています。日本国土交通省は2030年までに国内航空会社による燃料の10%をSAFに置き換える目標を掲げており、2050年にはカーボンニュートラルを目指しています。しかし、SAFの原料である廃食用油の調達は今後の大きな課題です。昨今、廃食用油は年間10万トンが海外に輸出されており、これが国産SAF製造の原料流出につながる恐れがあります。
プロジェクトへの期待
このプロジェクトが成功を収めれば、カラオケボックスで発生する廃食用油が国産SAFの原料として利用されるのは日本では初めての試みとなります。第一興商はこの取り組みを通じて、脱炭素社会実現へ向けた意識を高め、業界全体に広がることを期待しています。カラオケボックス業界が持続可能な資源循環の取り組みに加わることで、環境への配慮が進むことが期待されます。
結論
今後、第一興商と提携する企業がこのプロジェクトを通じて、国産SAFの安定供給体制を整えていくことが求められます。航空業界と飲食業界の連携が、持続可能な未来づくりにどのように寄与するのか、注目が集まっています。