神戸大学とRhelixaの共同研究がスタート
近年、子どもや若者のメンタルヘルスは深刻な社会問題となっており、特に抑うつやストレスによる影響が増加しています。そんな中、神戸大学と株式会社Rhelixaは共同で、子どもや若者の抑うつ・ストレス状態を非侵襲的に評価するDNAメチル化バイオマーカーの開発に乗り出すことを発表しました。この共同研究は、「ムーンショット型研究開発事業」の一環として行われます。
研究を始める背景
日本では、子どもや若者に対する虐待や慢性的なストレス、抑うつ状態が急増しています。実際に、平成25年度からのデータによると、児童虐待に関する相談対応件数は206%も増加し、令和5年度には225,509件に達するなど、過去最高水準を記録しました。また、若者の自殺者数も同様に増加しており、令和6年度には529人という統計史上最多を記録しています。このように、子どもや若者の心の健康問題は非常に緊急性の高い課題となっています。
神戸大学では、アジアで最大の自殺者コホートを用いた研究を進めてきた実績があり、その知見を活かして特に、強い心理的ストレスを抱えている10代の子どもは生物学的年齢、いわゆるエピゲノム年齢が上昇することを見出しました。また、適切なメンタルケアを受けることでその指標が改善される可能性も示されています。これらの発見から、早期に子どもや若者の心理的変化を把握できる客観的な指標の必要性が増しています。
共同研究の目的
今回の共同研究では、神戸大学がこれまでに積み上げてきたメンタルヘルスに関連するエピゲノムの変化に関する知見を基にし、Rhelixaが持つ先進的なエピゲノム解析技術およびアルゴリズム開発の専門知識を融合させ、DNAメチル化プロファイルに基づいた抑うつやストレス状態の推定手法を確立することを目指します。このような手法が開発されれば、子どもや若者の心の健康を客観的かつ早期に評価することが可能になり、より効果的なメンタルヘルスケアが実現するでしょう。
さらに、研究のデータの出典として、こども家庭庁や厚生労働省が提供する児童虐待相談対応件数や小中高校生の自殺者数のデータが引用されています。それにより、研究の社会的意義や必要性を一層強調しています。
Rhelixaについて
株式会社Rhelixaは、最先端のゲノム・エピゲノム解析技術を活用し、生物学、医学、薬学における基礎研究やソリューションの開発を行っています。次世代シーケンサーから取得したエピゲノムデータだけでなく、ゲノムやトランスクリプトーム、メタゲノムデータを統合的に解析し、細胞制御の詳細なメカニズムや高精度なマーカーの探索を行っています。また、データの統計解析や図版作成に関する環境を整え、研究開発をあらゆる場面で支援しています。
この新たな共同研究が進展し、子どもたちのメンタルヘルス改善に寄与することが期待されます。今後の成果に目が離せません。