最近、宇宙産業における革新の一歩が踏み出されました。SPACE COTAN株式会社(以下、SPACE COTAN)と将来宇宙輸送システム株式会社(Innovative Space Carrier Inc.、以下、ISC)が、宇宙往還の実現を目指して基本合意書(MOU)を締結したのです。この協定は、宇宙輸送の実現に向けた画期的な動きであり、両社は今後、相互に情報を共有し、具体的な打上げ計画を進めていくことになります。
SPACE COTANは、北海道広尾郡大樹町に本社を置く企業で、民間にオープンな商業宇宙港「北海道スペースポート(HOSPO)」を運営しています。一方、ISCは、東京都中央区に本社を構えるスタートアップ企業で、「毎日、人や貨物が届けられる世界を宇宙でも実現する」というビジョンを掲げています。
この協定により、SPACE COTANはHOSPOを拠点に、ISCのロケット「ASCA 1.2」試験機1号機の打上げに向けた射場運用計画を策定していきます。公益性を重視した新たな宇宙輸送システムの確立を目指すISCのこの取り組みは、2020年代後半の人工衛星打上げ用再使用型宇宙輸送システムの実現、さらには2040年までに有人宇宙輸送システムの国際競争力向上を見据えています。
現在、ISCは2025年中にアメリカでの初の飛行試験を計画しており、国内での打上げ試験の準備も進めています。その一環として行われるHOSPOからの打上げ試験は、宇宙産業の新たなスタンダードを考えさせる重要なステップとなるでしょう。
HOSPOの特異性と将来展望
大樹町に位置するHOSPOは、広大な土地と海に囲まれた理想的な環境を持ち、ロケットの打上げに適した地理的優位性を兼ね備えています。この特徴を生かして、HOSPOは宇宙ビジネスのインフラとして、実験場や射場の整備を進めており、その成果として2022年度に内閣府特命大臣表彰を受賞するなど、地域の活性化にも貢献しています。
地元の支援もあり、現在は人工衛星の打上げに対応する新たな射場「Launch Complex 1(LC1)」の整備が進んでいます。この射場が完成すれば、HOSPOは国際的にも注目される宇宙港へと成長することが期待されています。
SPACE COTANの代表取締役社長兼CEO、小田切義憲氏は、「HOSPOの立地を活かし、国際競争力のある有人宇宙輸送システムの実現に向け貢献していく」と意欲を示しています。また、ISCの代表取締役、畑田康二郎氏も「新しい世界観の実現に向け、地域活性化に寄与できることを大変嬉しく思います」とコメントを寄せています。
このように、SPACE COTANとISCの協働は、単に宇宙輸送の革新だけでなく、北海道の地域社会の発展にも寄与するものとなるでしょう。今後の展開から目が離せません。