2024年のアジア太平洋地域における商業用不動産投資額が、総額1,313億米ドルに達し、前年比23%増という大幅な成長を見せました。これは、2022年の水準をも上回るもので、特に第4四半期には349億米ドルが投資されたことが大きな注目を集めています。この成長の裏には、各セクターの活発な動きがあり、特にオフィスや物流不動産が強い需要を示しています。
JLL(本社:シカゴ)の調査によれば、アジア太平洋地域の商業用不動産投資の中心は日本やオーストラリア、シンガポールですが、これらの地域ではクロスボーダー投資が57%に達したという報告もあります。国内外の投資家は、安定した賃料の見通しと低金利環境を背景に、日本のオフィスや物流施設に対する投資を強化しているようです。たとえば、2024年第4四半期の日本市場では、146%も増加した107億米ドルが物流施設とオフィスに投資されました。
金利の上昇というマクロ的な課題はありますが、投資家たちはその対策としてバリューアッド戦略を重視し、資産の質にこだわった投資先を選別する姿勢が目立ちます。JLL アジアパシフィック キャピタルマーケットのCEOスチュアート・クロウ氏は、「アジア太平洋地域で5四半期連続の前年比成長を記録したことは、この地域の持続的な回復力の証です」と述べ、安定した不動産価格と緩和された借入コストが投資機会を生んでいるとも指摘しています。
オフィスセクターに目を向けると、全体で前年比12%増の488億米ドルの投資がなされ、韓国の優良オフィスビル市場も活況を呈しています。特に韓国では、シニアローン金利の低下とテナント需要の高まりが相まって、好調な市場環境を形成しています。しかし、大規模な資金調達は依然として難しいとの見方が強く、中堅規模のアセットに対する選別投資が進むとされています。
物流施設も依然として高い人気を維持しており、日本、オーストラリア、インドでの大型ポートフォリオ取引が影響を与えています。これら地域の物流施設に対する需要は非常に強く、特に日本では安定した賃料見通しが投資意欲を後押ししています。また、オーストラリアの物流市場でも、シドニーやメルボルンなどの中心地での投資が回復しています。
リテールセクターでは、2024年通年での投資額が前年比28%増加。オーストラリアではプライベートキャピタルが積極的に物件を取得し、シンガポールでは賃料が引き続き上昇しています。韓国では企業によるバリューアッド投資がリードしています。
今後について、JLLアジアパシフィック インベスターインテリジェンス ヘッドのパメラ・アンバー氏は、「アジア太平洋地域は依然としてグローバル資本にとって魅力的な投資先であり、長期的な機会が広がっています」と強調しています。特に、各国の中央銀行が金利引き下げに動く可能性がある中で、市場の透明性が向上し、持続可能な成長が期待されています。
日本の不動産市場に目を向けると、特に大型のオフィスビルの取引が活況を呈しており、金融政策の先行きには注意が必要なものの、賃貸需要や商業分野の売上向上が見られ、強い基盤が存在しています。2025年も活発な不動産取引が続くと見込まれています。