イーユン・リーの新作『自然のものはただ育つ』がついに発売!
アメリカ著名作家イーユン・リーの最新作『自然のものはただ育つ』が2025年11月18日に河出書房新社から発売されます。この作品は、著者が10代の息子を自らの手で失った苦悩をつづったものであり、全米図書賞ノンフィクション部門の最終候補になったことでも注目を集めています。
著者の心の闇に迫る
イーユン・リーは、実際に起こった悲劇的な出来事を背景にして書き下ろした本作で、彼女自身の経験を通じて「悲しみ」というテーマに深く切り込んでいます。16歳のヴィンセントと19歳のジェームズの二人の息子を自死で失った著者は、この痛みを正面から見つめ、その思いを言葉にしました。「私の悲哀に終わりはいらない」と語る著者は、悲しみは言葉では表現しきれないものだと訴えています。
この作品は、単なる悲劇の回想にとどまらず、悲しみを抱える心の深層を掘り下げていく力強いノンフィクションです。リーの言葉には、個々の体験による多様な苦しみが映し出されており、共感を絶やさない作品となっています。
作品の特徴と反響
『自然のものはただ育つ』は、長男の死後に小説『理由のない場所』を執筆した著者が、次男を亡くした時に書きあげたもので、過去の出来事だけでなく、思考の過程も含まれています。全米各紙はこの作品を絶賛しており、特に「ニューヨーク・タイムズ」や「ガーディアン」などが指摘するように、彼女の回想は「異質で深遠」と称されています。
また、著者は、同じ経験を持つ人々に向けて書いているわけではないと述べています。苦しみの形は人それぞれであり、著者が「奈落の底」と呼ぶ心の場所は、すべての人に共通するものとはならないのです。しかし、大切な人を失った人々には、この本を通じて深い理解や慰めをもたらす可能性があります。
本書の評価
「オブザーバー」紙は「この勇気ある本が愛の証と言うのは控えめな表現だろう」と評し、悲しみを捉え直す力こそが本書の最大の魅力であると述べています。また、「タイム」誌は「悲しむという言葉は、終わりがあるプロセスを示唆するからだ」とし、リーが悲しみについての認識を変えていることに触れています。
著者について
イーユン・リーは1972年に北京で生まれ、アメリカに移住後、数々の文学賞を受賞しています。彼女の作品は文学界で高く評価されており、今回のノンフィクションは初の邦訳です。優れた翻訳を手がけるのは篠森ゆりこ氏で、彼女の翻訳もまた注目されています。
このNovemberに発売される『自然のものはただ育つ』は、読者に深い感動と新たな視点をもたらす一冊です。この作品を通じて、私たちもまた、悲しみを共にし、理解を深めることができるのかもしれません。是非手に取ってみてください。