乳がん患者のための対話型疾患説明生成AIの導入
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所、大阪府立病院機構大阪国際がんセンター、日本アイ・ビー・エム株式会社の3機関は、AI技術を駆使した患者支援システムを導入しました。この新しいシステムは、乳がん患者に対して対話型で疾患についての説明を行うものであり、8月からの実運用を開始しました。
医療の現状と課題
医薬品開発は依然として多くの試行錯誤と時間を要しており、そのコストも膨大です。この課題を克服するためには、臨床情報をリアルタイムで集積し、質の高いデータを解析することが不可欠です。医薬基盤・健康・栄養研究所では、大阪国際がんセンターと協力し、医療機関の電子カルテからデータを集めて重要な医療ビッグデータを構築しています。
対話型疾患説明生成AIの運用
新たに導入された「対話型疾患説明生成AI」は、患者がQRコードを通じてWebブラウザにアクセスし、受診前の自由な時間に疾患に関する説明動画を視聴できるよう設計されています。また、患者は疑問点をチャットボットに入力して質問し、AIとの対話形式で情報を得ることができます。このシステムは、IBMの先進的なAI技術を用いており、業務効率化と医療の質向上を目指しています。
期待される効果
乳がんは日本人女性において最も多くの罹患数を持ち、その診療は複雑です。これまで疾患説明と同意取得には約1時間を要していましたが、今回のAI導入によりこの時間を30%削減することを目指しています。また、オンラインでの情報提供によって、地域格差の解消にも期待が寄せられています。
患者からは「確かな情報が得られる」「診察前に不安を軽減できる」との声が上がっており、本システムがもたらす影響が広がっています。
今後の展望
今後は「対話型乳がん疾患説明生成AI」の進化を図り、患者からの質問内容を解析して精度向上を目指します。また、他の診療科でも同様のAIシステムの導入が計画されています。2025年1月には消化管を扱う診療科においても運用が始まる予定です。
このように、生成AI技術の導入は医療現場に革命をもたらしつつあり、患者と医療従事者の双方にとって恩恵をもたらすことが期待されています。今後も三者は連携して、さらなるAIサービスの開発と安全な運用体制の構築を進めていく方針です。