COPD増悪後の心血管イベントリスク、日本で初めて長期にわたり増加することが判明 - アストラゼネカの研究結果
アストラゼネカ株式会社は、日本のCOPD患者を対象としたEXACOS-CV Japan研究の結果を発表しました。この研究は、リアルワールドデータを用いて、COPDの増悪とその後の入院を伴う心血管イベントの関係を日本で初めて明らかにしたものです。
研究では、40歳以上のCOPD患者を対象に、COPD増悪後の期間と死亡を含む重篤な心血管イベントの発生との関連性を解析しました。その結果、COPD増悪後の入院を伴う心血管イベントのリスクは、増悪後30日間でハザード比が1.44、増悪後365日まで増加することがわかりました。
本研究のScientific Advisory Committeeメンバーである山口大学大学院医学系研究科の松永和人教授は、この結果について、「COPD増悪と心血管イベントの関連性はこれまでにも報告されていましたが、日本人のCOPD患者における関連性については不明でした。今回の研究で、日本人も他国と同様にCOPD増悪後に心血管イベントのリスクが増加することが示されました。この結果は、COPD増悪後の心血管イベントの発生に注意深くモニタリングする必要があることを示唆しています。また、COPD増悪を起こさせない適切な治療介入の必要性を強調するものでもあります。」と述べています。
アストラゼネカの執行役員でありメディカル本部長の田中倫夫氏は、「日本の大規模な診療データベースを用いた今回の研究により、日本人においてもCOPD増悪は、肺だけでなく心臓にも影響を及ぼすことが示されました。COPD患者さんの将来リスク低減のために、循環器疾患の日常診療においても積極的なCOPD診断が行われ、心肺リスクを考慮した治療がより浸透していくことを期待したいと思います。」とコメントしています。
アストラゼネカは、COPD患者さんが早期受診、早期診断、および適切な治療を継続的に受けられるよう貢献することで、COPDによる死亡率の減少を目指しています。
EXACOS-CV Japan study について
EXACOS-CV Japan studyは、COPD増悪とその後の心血管イベントリスクを検証している世界規模のリアルワールドエビデンス、EXACOS-CVプログラムの一つです。本研究では、Medical Data Vision(MDV)データベースを使用し、2015年1月~2018年12月にCOPDと診断された40歳以上のCOPD患者データを抽出し、COPD増悪とその後の重篤な心血管イベントとの関連性を解析しました。
COPDについて
COPDは、肺の気流閉塞により息切れが起き、体力が消耗する進行性の疾患です。世界中で推定3億9,190万人に影響を与え、世界の死因第3位となっています。日本においては、推定有病患者数は約530万人とされる中、治療を受けているCOPD総患者数は約36.2万人と報告されており、未受診率・未診断率の高さが課題となっています。COPDの重要な治療目標は、肺機能の改善、増悪の減少、息切れなどの日常的な症状の管理です。COPDが悪化すると、著しい肺機能の低下、生活の質の大幅な低下、平均余命の大幅な短縮、死亡リスク増加につながる可能性があります。
COPDはがん、循環器疾患、糖尿病と並んで、国民の健康を推進する健康日本21で対策が必要な疾患として目標が掲げられています。2024年度からの健康日本21(第三次)においては、人口10万人当たりにおける死亡率が現状値13.3人(2021年)から目標値10.0人(2032年度)まで減少させるという新たな目標が掲げられました。