福島県矢吹町で新たな農業の未来を切り拓く実証事業が始まりました。この取り組みは、サグリ株式会社とアグリメディアが共同で実施し、衛星データを駆使して耕作放棄地の可視化を図ります。実証事業は2024年7月から本格的にスタートし、耕作放棄地を見つけ出し、農業法人や民間企業を誘致していくことが目的です。
矢吹町の農業の現状と課題
矢吹町は「日本三大開拓地」の一つとされ、広大な水田が特徴の米所として知られています。また、畜産や園芸作物の生産も盛んで、特に野菜の産出額は県内で6位という実績があります。しかし、近年は農業者の高齢化や農業人口の減少が進行しており、その影響で耕作放棄地が増加するという深刻な課題が浮上しています。
このような背景の下、アグリメディアは全国の農業求職者を矢吹町に誘致するために、地域と連携を強化しています。具体的には、矢吹町の広大な農地の活用方法を調査し、市場にマッチする農業者を見つけ出す取り組みを進めてきました。
実証事業の目的と方法
本実証事業では、GISデータと衛星画像の分析を用いて、矢吹町内の農地に関する情報を幅広く収集します。具体的には、土地の傾斜や圃場の形状の不均一性などを把握し、耕作放棄地の可能性が高い農地を特定していくのです。この手法により、重点的に対処すべきエリアを自動的に抽出できるようになります。
衛星データを活用することで、農業委員会が毎年行う現況調査の効率化が実現します。これまでは少人数で調査し、多大な時間がかかっていたため、業務が重複することが多くありました。しかし、今回の技術導入により、実態把握が飛躍的に早くなり、農地再生に向けた新たなアプローチが可能となります。
矢吹町からの期待の声
矢吹町の農業振興課の鈴木辰美課長は、「戦後の開拓事業で発展してきた町であり、農業はその基盤を支えてきました。現代の急変する農業環境の中で、民間企業の視点を取り入れ、矢吹町の農業を新たなステージに引き上げていきたい」と期待を寄せています。
ニナタバとその役割
この事業で重要な役割を果たす「ニナタバ」は、農地の所有者が自分の意向(貸したい、売りたいなど)を可視化するマッチングサービスです。農地所有者と担い手との繋がりを深めることで、耕作放棄地の解消を図っています。
サグリ株式会社について
サグリ株式会社は、2018年に設立され、衛星データの解析を中心に据えた事業展開を行っています。彼らは環境問題や社会問題の解決を目指しており、これまでにも様々な国で実証事業を展開してきました。国際展開も積極的で、シンガポールやインドには現地法人を持ち、インド・ベトナム・タイ・バングラデシュ・ケニア・タンザニア・ペルー・ブラジルといった国々で多様な取り組みを行っています。幅広い受賞歴も持つ、信頼性の高い企業です。
この新たな実証事業が、農業界にどのような変革をもたらすのか、今後の進展から目が離せません。