ロート製薬と東京科学大学、次世代のサイバーフィジカルシステムを推進する協働拠点設立

ロート製薬と東京科学大学の協働研究拠点設立

ロート製薬株式会社と国立東京科学大学は、最新のサイバーフィジカルシステム（CPS）に関する詳細な研究を行うための協働研究拠点を設置する協定に署名しました。CPSとは、現実空間にあるデータをセンサーネットワークを通じて収集し、それをサイバー空間で解析することで、効率的な製造や物流の実現を目指す技術です。この取り組みによって、製造の最適化だけでなく、社会問題の解決にも寄与することが期待されています。

共同研究の背景

ロート製薬では、年々増加する製造品目に対し、高品質な製品を安定的に提供するシステムの構築が求められていました。この課題を解決するため、東京科学大学の藤澤研究室と共に、CPSのマザー工場である上野テクノセンターにおいて実装を進めてきました。IoTやセンサ技術を駆使し、工場内のヒトやモノの動きを分析することで、AIやディープラーニングを活用した最適な生産プロセスを導き出しています。

特に、2024年の物流問題を考慮し、ロート製薬は複雑化するサプライチェーンを適切に管理し改善していく必要があります。これまでの研究結果を基に、工場外の倉庫や物流プロセスにもIoTを導入し、全体の最適化を図ることで、社会全体のウェルビーイング向上に貢献する考えです。

CPS導入の実績

上野テクノセンターでは、CPSを活用した「モノの移動最適化」に向けて、具体的な成果を上げています。自動倉庫の運用を最適化することで、輸送機の移動距離を50%以上削減し、作業者の待機時間も30%減少しました。また、エネルギー消費の削減やリアルタイムでの工場内の状況把握にも成功しており、生産効率の向上とコスト削減に貢献しています。

今後の展望

今後、ロート製薬はさらに柔軟で迅速な「リアルタイム最適化」を実現するため、センサ技術と各システムとの相互連携を強化すると共に、高精度なリアルタイムシミュレーションの開発を進めます。サプライチェーン全体の流れを俯瞰し、企業活動全体の効率化を追求することが目指されています。

特に、原材料調達から製品輸送にかけての物流ネットワークを最適化し、温室効果ガスの排出削減にも積極的に取り組む予定です。これは、マーケティングから製造、物流に至るまでロート製薬の全バリューチェーンをデジタルで革新する大きな一歩となるでしょう。

ロート数理CPSイノベーション協働研究拠点

この新たな研究拠点「ロート数理CPSイノベーション協働研究拠点」は、ロート製薬株式会社東京支社内に2025年7月1日から設置され、2030年3月31日まで運営されます。研究はロート製薬のビジネスプロセスを最適化するための数理最適化とCPSに関連するテーマが中心です。拠点の長には藤澤教授が、そして副拠点長にはCTOの國崎氏が就任しています。

この取り組みは、製造業におけるデジタル化の進展を象徴するものであり、今後の技術革新において重要な役割を果たすことが期待されています。