フクビ化学工業と早稲田大学の協力によるベンチデザインの進化
近年、街中のベンチに対する認識が変わりつつあります。かつては、ベンチが置かれることで「治安が悪くなる」という懸念があった一方で、現在では「人々が集える場所」へとその見方がシフトしています。このような背景の中で、フクビ化学工業株式会社が展開する屋外家具ブランド「Fandaline」は、新しい街の景観を作り出すためにベンチのデザインとその配置を研究しています。
この研究は、早稲田大学の佐野友紀研究室との共同によって進められています。早稲田大学は、群集行動の観察を通じて、都市空間が人々に与える影響について探求してきました。2022年からは、ウォーカブルな街づくりを目指したベンチ設置に向けた研究を行っており、両者の知見を結集することで、より良い公共空間の実現を目指しています。
この共同研究の一環として、2023年8月22日から25日まで、東京都港区の新田町ビルにて、市民の利用に適したベンチの配置について観察を実施しました。具体的には、通常の通路上に、横並びの「並行」、歩行者と向かい合わせの「垂直」、内向きに設置した「ハの字」、斜めに配置した「斜め」の4つのレイアウトを設定し、それぞれの配置が人々の行動に与える影響を分析しました。
調査の結果、4日間の合計利用者数は約600名に達しました。これらのベンチが設置されている通りにはコンビニやカフェがあり、多くの人が食事を楽しむ姿が見られ、昼食時には満席状態が続きました。研究では、滞在時間や着席する場所、行動の内容を記録し、快適なベンチに必要な要素を抽出しました。
観察データからは、滞在時間を5つのカテゴリーに分け、56%が10分未満の短時間利用であり、30分以上の利用者も存在することが明確になりました。また、利用者の行動は、スマホを使う、飲食する、休憩する、会話をするなど多岐にわたりましたが、特にスマホ利用と飲食が各30%を占めました。これらの結果は、ベンチの配置が人々の選択にどのように影響するかを理解するうえで重要です。
配列によって得られる行動の傾向も注目されました。斜め配置の場合、利用者はそれぞれ異なる視覚的な体験を持ちながら、自分の行動に適した席を選ぶ傾向が見られました。一方で、並行や垂直の配置では、席ごとの特性が均一であったため、選択基準が異なりました。
今後もフクビ化学工業と早稲田大学は、次なる研究を東京都の田町センタービル周辺で展開予定です。より多くの人が行き交う環境で、屋外空間におけるベンチのレイアウトが人流に与える影響を評価することにより、公共スペースの利便性と快適性を追求していきます。最終的には、これらの研究成果をもとに、持続可能な街づくりへの貢献を目指していきます。
フクビ化学工業の屋外家具ブランド「Fandaline」については、街の中で人々が集まり、安らぎを得られる空間を創出することを目的としており、今後も新しいデザインと機能性を兼ね備えた製品を開発し続けることでしょう。詳細は公式ウェブサイトで確認できます。
公式サイト:Fandaline