リスキリングで企業の生産性を向上させる意義と課題

はじめに

近年、企業経営において「人への投資」の重要性がますます高まっています。特に、人手不足が深刻な中での労働生産性向上の手段としてリスキリングが注目されています。政府もこの流れに乗り、様々な支援策を展開していますが、実際にリスキリングに取り組んでいる企業はごく少数で、その理由や課題について深掘りしていきましょう。

リスキリングの現状

調査によると、リスキリングに「取り組んでいる」と回答した企業はわずか8.9％にとどまっており、今後「取り組みたい」と考える企業も含めると26.1％にしか過ぎないことがわかりました。さらに、41.2％の企業は「取り組んでいない」と答えており、その中にはリスキリングの意義を理解していない企業も少なくないのが現実です。

業種別の取り組み状況

リスキリングに取り組んでいる企業の中で、業種別にみると、「情報サービス」業界の取り組みは20.5％と最も高く、次いで「金融」業界が19.5％と続きます。大企業におけるリスキリングの取り組み割合が高い一方で、中小企業や小規模企業の数値は低く、この違いがどのように生じているのかも鍵となります。

リスキリングの取り組み内容

リスキリングの主要な取り組みは「従業員のスキルの把握、可視化」が52.1％で最多でした。次いで、「eラーニング、オンライン学習サービス」などのデジタル手段が47.5％と続いています。これにより、従業員の技術向上を図る企業が増えているものの、課題として時間や人材の確保が挙げられています。

特に、重点的に取り組んできた企業ほど、「従業員のモチベーション維持」が難しいと感じているという旨の調査結果があります。目的なく研修を行っても結果は期待できないという声が多く、明確な目標設定が求められています。

直面する課題

リスキリングに直面している課題としては、主に「時間が確保できない」「人材不足」といったリソース的な問題が挙げられます。また、「取り組んでいない企業」では、リソースの不足が主な壁となっていることが明らかになりました。

例として、一人当たりの労働時間が厳しい業種ではせっかくの研修時間を確保することが困難で、「日々の業務に追われている」という意見が具体的に多くありました。

モチベーションの維持

一方、「取り組んでいる企業」においては、モチベーション管理が最大の課題だと強調されています。従業員の意欲を引き出すためには、研修の目的や具体的なキャリアビジョンを明示する必要があります。

課題解決に向けたアプローチ

リスキリングを効果的に行うためには、経営層のリーダーシップが重要です。具体的には、リーダーが自ら積極的に動くことで社内の風土を変えていくことが急務とされています。新しい技術への適応を目指すだけでなく、その背景にある企業の戦略と合わせて取り組むことが鍵となってきます。具体的な成果目標を設定し、従業員のキャリア形成に寄与する形で進めることが求められています。

まとめ

リスキリングを進めることは、現状の人手不足や労働生産性の向上において欠かせないテーマです。しかし、その取り組み状況を見つめると、企業のリソースや従業員のモチベーションに関する課題が浮き彫りになっており、それを解決するためには、経営層のリーダーシップと明確な目的が不可欠です。今後も、リスキリングの重要性に目を向け、進展を図る必要があります。