次世代AIによる磁性材料のエネルギー損失解明
2025年の8月12日、東京理科大学、筑波大学、岡山大学、京都大学の研究チームが次世代AIを用いて、磁性材料のエネルギー損失の原因を明らかにする重要な成果を発表しました。この研究は、特に電気自動車(EV)の効率向上に貢献する可能性が高いとして期待されています。
1. 研究の背景と目的
電気自動車の心臓部であるモーターは、磁性材料による「エネルギー損失」、すなわち「鉄損」が大きな効率低下の要因となっています。鉄損はモーター全体のエネルギー効率の約30%を占め、年間で約6億トンのCO₂排出に相当します。しかし、これまでこの損失のメカニズムに関する詳細な理解は不足しており、材料設計におけるボトルネックとなっていました。
2. 研究の成果
研究チームは、無方向性電磁鋼板(NOES)という電気自動車で広く使用されている材料を対象に、次世代の説明可能AI「拡張型自由エネルギーモデル」を用いて詳細な分析を行いました。このモデルは、数学のトポロジーと熱力学の自由エネルギーの考え方を融合させ、構造と機能の因果関係を視覚的に理解できるものです。
具体的には、顕微鏡画像上でエネルギー損失の発生場所を可視化することに成功しました。この成果により、複雑な磁壁の役割を特定し、その位置を見える化することが初めてできたのです。
3. 今後の展望
本研究の成果は、単に磁性材料にとどまらず、半導体デバイスや電池材料など様々な環境エネルギー材料への応用に期待が寄せられています。将来的には、この新しい解析手法を利用することで、エネルギー効率の最適化が進み、持続可能な社会の実現に寄与することが望まれています。
研究の詳細は2025年7月15日、国際学術誌『Scientific Reports』に掲載されました。今後の進展に注目が集まります。
4. 研究者の言葉
本研究を主導した東京理科大学の谷脇三千輝氏は、「この成果が今後の省エネルギーな次世代EV開発に大きな寄与をもたらすことを期待しています」と述べています。研究チームは、AIと物理学の融合によって、科学の新たな地平を切り開くことができたと自負しています。
参考文献
- - 論文名: "Automated identification of the origin of energy loss in nonoriented electrical steel by feature extended Ginzburg–Landau free energy framework"
- - DOI: 10.1038/s41598-025-00357-z
以上の研究成果は、環境問題に対するアプローチに新風をもたらすものとして、今後の発展が楽しみです。