画期的治療! 近視性網脈絡膜萎縮症に新たな希望。ヒト幹細胞シート移植の治験開始

近視性網脈絡膜萎縮症に新治療の光!ヒト幹細胞シート移植治験開始



失明リスクの高い難治性疾患である近視性網脈絡膜萎縮症に、新たな治療法の希望が灯りました。名古屋市立大学とファーマバイオ株式会社が共同で開発した、ヒト皮下脂肪組織由来間葉系幹細胞シート「PAL-222」の移植に関する第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験が開始されたのです。

PAL-222とは?



PAL-222は、名古屋市立大学大学院医学研究科の安川力教授が開発した独自技術を基盤としています。細胞自身が作り出す細胞外マトリックス成分のみで構成された、ブルッフ膜様構造を持つ細胞シートです。この技術をファーマバイオ社が応用・発展させ、再生医療製品として実現しました。

従来の細胞懸濁液移植と比べ、PAL-222は細胞の生着率向上、移植細胞の機能発揮、合併症リスク軽減といった可能性を秘めています。さらに、間葉系幹細胞の特性である同種拒絶反応の起こりにくさや、成長ホルモン・サイトカインの分泌による組織保護効果も期待されています。

近視性網脈絡膜萎縮症:深刻な視力障害



近視性網脈絡膜萎縮症は、強度近視に関連して発生する重篤な疾患です。眼軸長の伸長により網膜や脈絡膜が薄くなり、網膜色素上皮の機能障害が起こることで発症します。

この悪循環により、網脈絡膜が萎縮し、最終的には視力低下、視野欠損、そして失明に至る可能性があります。現在、有効な治療法は存在せず、多くの患者さんがこの病気と苦しんでいます。

治験の内容



今回の治験は、近視性網脈絡膜萎縮症患者10名を対象とした第Ⅰ/Ⅱa相試験です。PAL-222の移植による有効性と安全性を検証することを目的としています。名古屋市立大学病院の医療チームが移植手術を担当し、患者さんの状態を綿密にモニタリングしていきます。

関係者の声



名古屋市立大学病院の医療チームは、この治験開始について、「これまで治療法がなかった近視性網脈絡膜萎縮症の患者さんにとって、大きな前進となる」と期待を寄せています。患者さんやご家族への感謝とともに、早期承認への願いが込められています。

今後の展望



この治験の結果が、近視性網脈絡膜萎縮症に対する新たな治療法確立への大きな一歩となることが期待されます。今後、研究開発の進展により、多くの患者さんが失明の危機から救われる可能性が高まるでしょう。

用語解説



細胞外マトリックス成分: 細胞の接着や組織形成、外力への抵抗に重要な成分。コラーゲン線維や弾性線維などから構成されます。

近視性脈絡膜新生血管: 眼軸長伸長に伴いブルッフ膜が断裂し、異常な血管新生が起こる状態。

近視性牽引黄斑症: 眼軸長伸長により網膜が後方へ偏位し、硝子体が網膜を前方へ牽引することで網膜剥離や黄斑円孔を引き起こす状態。

網膜色素上皮: 網膜の一番外側にある細胞層。視細胞の維持や栄養供給、老廃物処理などに重要な役割を果たします。

細胞懸濁液: バラバラの細胞を含む液体。

問い合わせ先



名古屋市立大学大学院医学研究科 視覚科学分野

ファーマバイオ株式会社

名古屋市立大学 病院管理部経営課

会社情報

会社名
ファーマバイオ株式会社
住所
愛知県名古屋市西区上名古屋4丁目14-17
電話番号
052-508-5701

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