須藤玲子《扇の舞》がオンライン公開
イギリスのコンプトン・バーニー美術館で開催中の展覧会「ファブリック:タッチ&アイデンティティ」では、日本のアーティスト須藤玲子による作品《扇の舞》がオンラインで公開されています。この展示はファブリックが私たちのアイデンティティにどのように影響を与えるかを探求しており、アート、デザイン、ファッション、映画、ダンスという多様な視点からその身体性と社会性を明らかにするものです。
美術館のご紹介
コンプトン・バーニーは18世紀に建てられた美しい邸宅を改装した美術館で、庭園に囲まれたユニークな展覧会が特徴です。今回の展覧会においては、須藤玲子の他にも、イギリスのファッションデザイナーであるヴィヴィアン・ウェストウッドや、現代のアーティストたちの作品が展観されています。これらの作品は、布の持つ重要な役割—ジェンダーやセクシャリティなど、私たちの社会的アイデンティティの形成—を反映しているのです。
《扇の舞》の表現
須藤玲子の《扇の舞》は、青い布製の扇で覆われた空間を創り出しており、見る者に独特の体験を提供します。この作品は、2017年にワシントンD.C.のケネディセンターでの展示を基に発展させたもので、空間デザインはフランスの建築家アドリアン・ガルデールが担当しています。扇は平安時代から続く日本の文化で、多くの役割を持ちます。その多義性を象徴するため、すべてブルートーンで制作されているのが特徴です。
日本の文化と青の使い方
「青」の色は日本の歴史の中で重要な意味を持ち、奈良時代から今日まで続いています。須藤はこの青色に対する敬意を表し、さらには、その文化的背景を観客に伝えようとしています。1890年に来日したラフカディオ・ハーンが日本を「青い国」と表現したことからも、この色が持つ特別な意味を再確認できます。
職人とのコラボレーション
須藤玲子はNUNOを通じて、日本各地の優れたテキスタイル製造者とコラボレーションし、伝統技術に現代的なデザインを融合させた布作りに取り組んでいます。《扇の舞》で使用されるテキスタイルは、NUNOのアーカイブから選ばれたもので、徳島にあるBUAISOUとの本藍染の技術を使用しています。これにより、古い技術と最新の技術が融合する新しいものづくりが実現されています。
オンライン公開の意義
今回の展示がオンライン公開されることで、全世界の観客がリアルな空間を体験する新たな機会を持つことが可能になります。カメラを通じて、作品のディテールをより近くで鑑賞できることは、従来の展示形式では得られない体験です。《扇の舞》は、今年の秋に茨城県近代美術館での展示も予定されており、今後の展覧会の楽しみ方が多様化することが期待されます。
詳細情報
今回の展覧会「ファブリック:タッチ&アイデンティティ」は、コンプトン・バーニー美術館で開催されており、2021年1月までの予定です。日本国内での展示予定は、2020年11月3日から12月20日まで茨城県近代美術館で行われます。
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