新たながん治療法の開発：3Dミクロ腫瘍モデルが示す可能性とは

がんの治療に関して、早稲田大学高等研究所の西田奈央講師と米国フレッド・ハッチンソンがん研究センターの研究チームが新しい切り口からのアプローチを発表しました。これまでのがん治療薬が主にがん細胞そのものを狙ってきたのに対し、今回の研究ではがんの周囲に存在する「サポート役」の細胞に着目。これにより、がん治療の新たな展望が開かれる可能性があります。

研究の背景と目的

がんは日本国内で依然として主要な死因であり、その治療法の開発は急務です。これまでの治療はがん細胞そのものを直接攻撃する薬の開発が主流でしたが、最近の研究ではがんの隣接細胞たる腫瘍随伴線維芽細胞（CAF）ががんの成長や転移を助けることが明らかになってきました。

この研究チームは、体内に近い実際の腫瘍に類似した3Dミクロ腫瘍モデルを用い、従来の方法では見逃されていたサポート細胞に効果的な薬を多く発見しました。特に注目されたのが「ドラマピモド」という薬です。

ドラマピモドの効果

ドラマピモドは本来、抗炎症薬として開発された化合物ですが、その効果を調べた結果、腫瘍随伴線維芽細胞の働きを抑制し、がん増殖を抑えることがわかりました。これにより、既存の抗がん剤や免疫治療薬との併用効果も高まりました。

この研究では、マウスモデルによる3D腫瘍のスクリーニングを実施し、400種以上の薬剤を調査。その結果、ドラマピモドを含む複数の有効な候補薬剤が見つかりました。興味深いことに、従来の2次元培養に比べ、治療薬候補数は3倍以上に上ります。