双日、フィンランドの水素技術企業へ追加出資し筆頭株主に
双日株式会社は、フィンランドに本拠を置くHycamite TCD Technologies Oy(以下「Hycamite」)への追加出資を行い、同社の筆頭株主となりました。この出資は、Hycamiteが実施する第三者割当増資の一部を引き受ける形で行われ、2023年7月にも同社へ出資を行っています。この追加資金は、Hycamiteがフィンランドのコッコラ工業団地内に設けた新たな商業規模プラントでの運転や実証試験に使われる予定です。
Hycamiteは2020年に設立されたスタートアップ企業で、天然ガスやバイオガスの主成分であるメタンを熱分解することで水素と高付加価値の固体炭素を製造する技術を誇ります。このプロセスで得られる水素は「ターコイズ水素」と呼ばれ、製造時に二酸化炭素を排出しない特性から、次世代型の水素として注目を集めています。特に、Hycamiteが開発した革新的な触媒技術により、エネルギー消費量が一般的な電気分解のプロセスのわずか13%で済むことが、同社の大きな強みとされています。
ターコイズ水素の生産は2025年初頭を目指しており、年産2,000トンという欧州最大級の生産能力を誇ります。また、このプロセスで生じる固体炭素は、リチウムイオン電池、セメント、タイヤなど多種多様な用途での利用が期待されています。固体炭素製品がサステイナブルな素材として高い需要を示していることも、Hycamiteにとって有利な要因です。
双日は、Hycamiteとの協業をさらに強化し、この技術を活用した国内外プロジェクトを推進する計画です。すでに電力・ガス企業や化学メーカーとの協議を進めており、2020年代後半の商業化を見込んでいます。併産される固体炭素製品については、双日が持つ広範な顧客基盤を生かして様々な分野の企業への提案を行うことが目標です。
双日は中期経営計画「2026」において、グリーントランスフォーメーション(GX)を戦略的重点領域に設定しており、これに資する事業へ積極的にリソースを配分しています。Hycamiteとの連携を深めることで、ターコイズ水素の商業化を進め、日本国内外での脱炭素化に向けた取り組みを強化していきます。
水素はその製造方法に応じて「色」で区分されることが注目されています。現在の主流は化石燃料を用いた「グレー水素」ですが、二酸化炭素を地下に固化する「ブルー水素」、再生可能エネルギーを使った「グリーン水素」、そしてメタンを熱分解した「ターコイズ水素」があります。これらの異なる製造方法は、それぞれに異なる環境影響を持っており、ターコイズ水素は特に脱炭素化に貢献できる存在とされます。
Hycamiteは、フィンランドのオウル大学での20年以上にわたる触媒研究の成果を用い、根底には豊富な天然資源を持つフィンランドの強みがあります。ターコイズ水素及び高付加価値の固体炭素の技術開発は、フィンランドの歴史的な冶金技術の進化の中で生まれています。双日との連携が進むことで、環境に優しい水素事業の発展が期待されています。