医療業界の変革を目指す新DXシステム「eye MIRU」始動
滋賀県草津市に位置する社会医療法人誠光会が、日本初の医療施設DXシステム「eye MIRU」を導入し、外来診療の効率化を実現しています。このシステムは、医療情報システムと建物OSを連携させ、全体の運営がスムーズに行える仕組みを提供します。2024年4月から行ってきた実証運用が肯定的な結果を見せ、本格的な稼働が2024年8月から開始されました。
医療業界が直面する課題
日本の医療業界は、団塊世代の高齢化が進む中、患者数が増加しています。一方で、生産年齢人口は減少傾向にあり、医療機関は限られた職員で多くの患者を受け入れる必要が求められています。誠光会は、こうした課題に正面から向き合い、医療現場を俯瞰的に見える化する取り組みを行っています。それにより、全職員が自立して考え、瞬時に行動できる組織文化の構築を目指しています。
経営改善の過程とスマート・ホスピタルへの道
誠光会は10年以上にわたり赤字経営に苦しんできましたが、2014年から始めた部門別原価管理などの施策を通じて経営改善を図っています。この中で、すべての医療機能を備えた草津総合病院を、急性期病院と在宅療養支援病院に再編し、それぞれの機能を明確にしました。また、地域医療の連携を促進するために湖南メディカル・コンソーシアムを発足させ、地域全体の医療提供体制の最適化を目指しています。最終目標は、スマート・ホスピタルを中心とした地域社会の実現です。
新たなアプリケーションの導入
誠光会は2021年に入院関連アプリケーションのコマンドセンターを導入しました。これにより、電子カルテのデータがリアルタイムで分析され、限られた医療資源の効率的な配分が可能になりました。2024年度からは新たな外来関連アプリケーション「eye MIRU」が稼働し、外来業務の俯瞰的な可視化が進む中で、職員が自主的に行動できる環境を整えています。更には、患者用アプリケーションとの連携も計画されており、外来待ち時間の短縮を目指しています。
アプリケーション開発の理念
「eye MIRU」の開発においては、「患者の価値向上」「職員の生産性向上」「法人の持続可能性向上」がコンセプトとされています。外来の待ち時間短縮や、混雑時の職員配置の調整など、組織全体で効率を追求しています。また、これにより経営効率が高まり、患者数の増加にも寄与することが期待されています。
組織文化の変革
データが見えることで全職員がより自発的に行動する文化を育むことが目標です。「少し先の状況を全員が把握する」ことで、やるべき行動が明確になります。さらに、具体的な数値に基づいて行動を決定する仕組みを導入し、組織全体が一体となって医療提供体制を強化していくことが求められています。
誠光会は、新しい医療サービスの在り方を模索し、地域住民にとってより良い医療環境を提供していくために、今後も引き続き取り組んでいく所存です。