岡山大学が推進するヘリウムリサイクルネットワーク
国立大学法人岡山大学は、研究活動に必要不可欠な天然資源である液体ヘリウムのリサイクルを通じてその利用促進と安定供給体制の確立を目指す「中四国・播磨ヘリウムリサイクルネットワーク」(通称:中四国・播磨HeReNet)のオンライン学外説明会を開催しました。
この説明会は、学内での取り組みを受けたものであり、大学や研究機関、高等専門学校などの8つの連携機関からの関係者が集まり、岡山大学の「研究機器の共用の体制・整備等の強化に関するタスクフォース」のメンバーが概要を説明しました。ここでは、更新されたヘリウム液化装置の詳細、他機関とのヘリウムリサイクル方法、また連携機関向けに整備されるガスバッグや圧縮機の詳細についても触れられ、活発な意見交換が行われました。
ヘリウムの需給状況と岡山大学の取り組み
液体ヘリウムは日本では全量が輸入に依存しているため、国際情勢やコロナ禍の影響でその価格は年々上昇しています。このため、多くの研究機関でヘリウムの入手が困難となり、研究活動に深刻な影響を及ぼしています。岡山大学は、この状況に対処すべく、施設内にヘリウム液化装置を設置し、学内での液体ヘリウム供給と排出されたヘリウムガスの回収・再液化を進めるシステムを確立しています。
このリサイクル体制は、NMR装置などの研究設備から発生するヘリウムガスを回収し、再利用することを目的としており、岡山大学が位置する地域での持続的なヘリウムの利用を実現します。
地域連携によるヘリウムの効率的な利用
多くの大学や高専等の研究機関は、ヘリウム液化装置を所有していないため、民間企業から購入した液体ヘリウムを使用し、発生したヘリウムガスを大気中に放出せざるを得ない現状があります。このため、岡山大学は中四国・播磨HeReNetを通じて、連携機関で発生したヘリウムガスを効果的に回収し、ガスバッグに格納、圧縮機を介してボンベ詰めし、岡山大学へ運ぶ仕組みを構築します。
これは、地域内での横のつながりを強化するだけでなく、ヘリウムリサイクルの実現に向けた重要なステップとなるでしょう。ヘリウム液化装置は高価な中規模研究設備であり、その運用には専門的な技術とコストが必要ですが、岡山大学はその地域の中核大学としてリーダーシップを発揮し、このプロジェクトを推進していきます。
研究力の向上を目指して
岡山大学は文部科学省の「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択されており、研究力向上を目的とした各種施策を実施しています。この挑戦は地域の研究機関にとっておおいにプラスとなり、技術革新の基盤を強化し、さらには日本全体の研究力を向上させることが期待されています。
那須保友学長は「中四国・播磨HeReNet」を他機関との連携を重視しながら進めることの重要性を強調し、今後の研究基盤の確立に努めていく意向を示しています。
地域の未来を共創し、持続可能な研究環境の下で新たなイノベーションが生まれることを期待し、岡山大学の取り組みに今後も注目していきましょう。