学校の未来を切り開くための対話と考察
2024年12月17日、株式会社東洋館出版社より、組織開発者の勅使川原真衣さんが編著した対談集『「これくらいできないと困るのはきみだよ」?』が刊行されることが発表されました。この本は、現代の教育環境における深刻な問題、不登校や教職員のメンタルヘルスの低下に焦点を当てています。文部科学省が2024年10月31日に発表した調査によれば、不登校児童生徒の数は34万人を超え、教職員の病休者も過去最多を更新しました。これらのデータは、学校という場所がどれほど居づらくなっているかを物語っています。
この対談集は、学校で培われる「これくらいできないと困る」という社会的なプレッシャーについて深掘りし、それがどこから来ているのかを探ります。「これくらい」とは誰が決めた基準なのか?その基準に従わなければならない理由は何なのか?教育現場で実際に起きている問題を背景に、集中的に議論されています。
不登校問題と教師のプレッシャー
著書『「能力」の生きづらさをほぐす』で広く知られる勅使川原さんは、現代の教育において能力主義がどのように影響を及ぼしているのかを再考します。そして、インクルーシブ教育の推進に取り組む専門家たちとの対話を通じて、教育界の最前線で何が必要とされているのかを見出そうとしています。
特に今年の調査結果は、中でも「声を聞かれること」がいかに重要であるかを示しています。教師たちは自身の声があまりにも聞かれない背景を知り、それを取り戻す努力をしています。その結果、子どもたちに期待される「これくらいできないと」という言葉に隠された負担やプレッシャーを理解し、解消していく主題も盛り込まれています。
対話の4つのテーマ
本書では、4人の専門家との対談を通じて、教育現場の現実的な課題を綴ります。
1.
野口晃菜さんとの対談では、教師が抱える声の“聞かれなさ”に着目し、子どもたちへのプレッシャーの原因を探ります。
2.
竹端寛さんとの対談では、現代の学校でのケアという概念について掘り下げ、どうやってケアし、ケアされるのかを考えます。
3.
武田緑さんとの対談では、教育現場での民主的対話の重要性と学校と社会の関係性を考察します。
4.
川上康則さんとの対談では、教師の働き方改革や、特に特別支援学生との関係について深く掘り下げます。
これらの対話を通じて、今の教育システムが持つ課題を浮き彫りにし、どのようにして解決に向かって進むことができるのか、前向きな視点を提供しています。
おわりに
勅使川原真衣さんの編著によるこの対談集は、教育や福祉の分野において何が必要なのか、どのように進めていくべきかの具体的な指針を示しています。教育現場での「居づらさ」を軽減し、すべての子どもにとって学びやすい環境を築くためのヒントが、ここに詰まっています。ぜひ、多くの方にご一読いただきたい一冊です。