近年、企業のソフトウェア開発における課題が深刻化しています。Tricentisが発表した「クオリティ・トランスフォーメーション・レポート2025」では、調査に参加した2,700人以上のCIO、CTO、エンジニアが直面している問題が浮き彫りになっています。調査によると、なんと67%のグローバル企業が今後1年以内に重大なソフトウェア障害のリスクを抱えていることが分かりました。
特に、今日の経済環境では、迅速な成果を求めるプレッシャーが強く、デリバリースピードを重視する企業が急増しています。実際、調査の結果では、ソフトウェア品質の向上を期待する企業は全体の13%に過ぎず、デリバリースピードの向上を望む企業は45%に達しています。日本でも同様の傾向が見られ、デリバリースピードを重視する企業は40%に達し、品質向上を希望する企業はわずか7%という結果が出ているのです。
また、調査では63%の回答者が、リリースを行う際にコードの変更を完全にテストせずに出荷していることが判明しました。その理由としては、テストの実施によるリリースサイクルの遅延を避けるためや、偶然に未テストのコードが含まれてしまう場合が挙げられています。このような現状が続く限り、ソフトウェア品質の低下が企業にとって大きなリスク要因となり、年間に数百万ドルの損失をもたらすことは間違いありません。
実際、42%の回答者はソフトウェア品質の低下によって年間100万ドル以上の損失を報告しており、金融サービス業界においては特に影響が顕著です。日本の金融関連企業でも、約半数が品質低下による損失を1.5億円から最大7.4億円と推計しているとのこと。
このように、ソフトウェアの品質向上が求められるなかで、開発者と経営陣の連携が不足していることが問題に拍車をかけています。調査では、ソフトウェア開発チームとQAチーム、さらには経営陣とのコミュニケーション不足がそれぞれ33%および28%で、品質向上の障壁として最も大きな要因であることが分かりました。
しかしながら、多くの企業はAIの導入によってこの問題を解決できると期待しています。実際、82%の企業がAIエージェントが開発ライフサイクルの単純作業を担うことにより、より戦略的な業務に注力できると信じていることが分かりました。日本ではその割合が89%に達し、AIがソフトウェアの品質とデリバリースピード向上に貢献できるという期待も高まっています。調査結果によると、AIがデリバリースピード向上に役立つと考える企業は84%、日本では85%に達しています。
さらに、調査の回答者の9割は、自律型AIがソフトウェアのリリースに対する意思決定を支援できると確信しています。この傾向は日本企業でも同様で、見込みを持つ企業が多いことが窺えます。また、生成AIを活用した費用対効果の測定が可能だと答えた企業も約90%に上り、それによって戦略的な経営を支えることが期待されています。
AIを活用した自律的なテストがもたらす効果に関しては、ソフトウェアデリバリーのスピードが28%、品質が30%向上すると予想されています。これにより、企業はより迅速で高品質なソフトウェアを実現できる可能性が広がります。
TricentisのCEO、Kevin Thompsonは「近年未確認または未テストのコード変更が原因となるソフトウェア障害が多発している。高品質なソフトウェアを維持するためには、品質とスピードのバランスを適切に取る必要がある」と警鐘を鳴らしています。
このレポートが示すように、AIの進展はソフトウェア開発の現場に新たな可能性をもたらす一方で、品質とスピードのバランスを求められる中で新たな課題も浮上しています。Tricentisの提供するAIを活用したテストソリューションは、この課題解決に向けて一助となることでしょう。