国境なき医師団が警鐘、医療への攻撃が増加中の現状
武力紛争の渦中で医療が攻撃される事例が急増しています。国境なき医師団(MSF)の新たな報告書「標的にされる医療(Medical care in the crosshairs)」は、国際人道法の遵守が著しく損なわれている現状を厳しく批判しています。これにより、医療施設、医療従事者、患者が保護されるべき立場にない現実が浮き彫りとなっています。
医療への攻撃が歴史的なレベルに
2025年には医療施設への攻撃が1348件に上り、医療従事者と患者が1981人も命を落とすという衝撃的なデータが記録されています。これらの数値は、紛争地における医療の状況がいかに厳しいものであるかを示しており、特にスーダンが1620人という最多の死者を出していることは、国際社会の対応を急がせる要因となっています。
この報告書は、国際人道法を尊重する紛争当事者の減少が進む中、どのようにして民間人の命が軽視されているかを描写しています。MSFのエリック・ラーン氏は、これまで「間違えて攻撃」とされていた行為が、現在では「保護の喪失」の結果として正当化されるようになったと指摘しています。これは、医療への優先順位が軍事目的に置かれていることを意味します。
増加する国家による医療への攻撃
2024年のデータによると、医療を標的にした事件は3623件に達し、そのうち約81%が国家組織によるものでした。国家組織は市民の多くが集まる場所での攻撃を行う傾向があり、これは医療サービスの提供を極めて難しくしています。MSFスペインのコーディネーター、ラケル・ゴンザレス氏は、医療を守る上で国家の関与がいかに重要かを語り、その影響の大きさを警告しています。
国際人道法が十分に尊重されない場合、医療へのアクセスは一層厳しくなります。現地で働く援助スタッフが過酷な状況にさらされる中、彼らは自身の命を危険にさらしながら救助活動を行っています。
国際社会の責任と対応
10年前に採択された国連安保理決議2286号は、これらの状況に対する国際的な認識の高まりを示しました。しかし、実際のところ、武力紛争における医療と人道活動は今もなお、攻撃の対象として残っています。
ラーン氏は、国際人道法を遵守することが何より重要であり、すべての紛争当事者が医療を守るために必要な措置を講じるべきだと訴えています。そして各国には、独立した事実調査を受け入れ、不処罰の風潮を打破するための透明性の高い体制を整える責任があります。これは、今後の医療の保護と、民間人を守るための根本的な対策となるでしょう。
医療への暴力が続く限り、国際社会はその影響を受ける多くの人々のために声を上げ続けなければなりません。今回の報告書は、その必要性を再確認するものであり、国際的な意思が求められているのです。