未知の蝶を求めた壮絶な冒険
日本でも蝶の研究が盛んですが、特に注目されたのがその珍しさから「怪蝶」と名付けられるアゲハ蝶の研究。そんな未知の蝶を追い求めるために、超破天荒な探検に立ち上がった著者がいます。その名は五十嵐邁。彼は会社員として働きながら、蝶を求めて世界各地を巡り、数々の壮絶な体験を重ねてきました。
蝶の魔境・インドの冒険
著者はまずインドでテングアゲハを追い求めました。彼は危険が迫るインドの山中で、遭難の危機に見舞われます。それでも虫を追う情熱は止まりません。泥水を飲み、再び蝶を見つけるために奮闘していく様子が生き生きと描かれています。特に、彼が直面した厳しい条件や、出会ったさまざまな人々のエピソードが心に響きます。
フィリピン・ベンゲットの道
次に訪れたのはフィリピンのベンゲット。この地で新種の美しい蝶を発見することに成功しますが、過酷な環境下での奮闘が続きました。時には日本軍の認識票を持つ者との出会いや、思わぬ試練もあり、彼の行動には緊張感が漂います。
イラクの熱砂と再生
イラクでは、砂漠の死に対する蝉のような戦いがあります。水も尽きかけ、恐怖にさいなまれる著者がどうにか「黄色い皇帝」という蝶を手に入れるため悪戦苦闘する様子は感動的。この章では、「生存の戦い」と「夢の追求」という二つのテーマが巧みに絡み合っています。
イランとブータンの魅力
次に、エルブルツの高峰でヒマラヤの貴婦人と呼ばれる蝶との出会いや、ブータンの美しい自然の中での探検が描かれます。文化や風土の違う国でどのように蝶を探し求めたか、その過程での葛藤や喜びが伝わります。
中国、スラウェシ、ラオスへの旅
著者は中国、スラウェシ、ラオスなど、さまざまな国を訪れ、各地で未知の蝶に遭遇します。特に、疫病に苦しむラオスでは、病気と戦う著者の姿勢が感動的です。彼は病を克服し、アゲハ蝶を追うその情熱は本当に素晴らしいものです。
結びとして
最後に、オーストラリアやシンガポールでの驚きに満ちた出来事を通じて、繁雑な人生のなかでいかに夢を持ち続けるか、またその夢を追求し続ける重要さをこの書籍は教えてくれます。五十嵐の貴重な体験と、蝶への愛情が詰まった『アゲハ蝶の白地図』は、読む者に勇気と刺激を与えてくれるエッセイです。
発刊情報
本書は2025年10月17日に文庫版として発売され、定価は1540円です。424ページにわたるこの探検記は、未知の蝶に挑む冒険を通じて、人生の魅力を再発見させる一冊になることでしょう。