カラーレンズメガネが姿勢制御に及ぼす影響
最近の研究で、カラーレンズメガネの色が姿勢制御に与える影響が明らかになり、多くの運動愛好家やアスリートの関心を集めています。カラーレンズの選び方が、運動パフォーマンスやリハビリテーションにとって重要であることが科学的に証明されたのです。この研究は、国立大学法人東北大学と複数の企業が共同で行ったもので、色に基づく運動能力の変化に焦点を当てています。
研究の背景と重要性
スポーツや日常的な健康維持において、バランス能力は極めて重要とされています。これまでの研究の中で、環境色やユニフォームの色、さらにはサングラスのレンズの色が運動のパフォーマンスに影響を及ぼす可能性が指摘されていましたが、実証としては不十分でした。特に、色が運動制御能力に与える影響については、具体的な研究が不足していたのです。
この研究に取り組んだのは、東北大学産学連携機構未来社会健康デザイン拠点の永富良一教授らの研究チームで、株式会社Innochi、エスエイビジョン株式会社、三井化学ファイン株式会社との共同により、幅広い視点からの実施が可能となりました。
研究の方法
研究チームは、透明レンズを含む26色のカラーレンズを使用して、具体的な運動テストを行いました。特に、片脚立ちやジャンプ着地時のバランス調整能力を評価するために、床反力計を用いて身体の反応を精密に測定しました。この研究では、各レンズ色で66回のテストが行われ、試験結果から色によるバランス能力の効果が判明しました。
結果とその意義
研究の結果、特定の色のレンズを使用することで、重心動揺面積が透明レンズに比べて20%以上小さくなる場合がある一方で、逆に大きくなる場合もあることがわかりました。また、バランス能力に良い影響を及ぼす色は個人によって異なるため、一人一人に合った最適な色を見つけることが重要となります。興味深いのは、万人に共通するバランスに良い色は見つからなかったことです。このような発見は、特に自閉症児におけるカラーレンズの影響が以前から知られていましたが、健常者に対する影響が明らかになったのは初めてのことです。
今後の展望
研究の成果は、高所作業や登山など危険を伴う環境での歩行の際、バランスを崩しやすい色を避けるための実用的な知見を提供します。少なくとも、特定の色がバランスに対して有利または不利であることが確認されています。今後は、個人に最適な色を見つける方法を確立し、色がバランスに及ぼす影響を深く理解するための研究が進むでしょう。これは、東北大学の「情動と運動制御」という研究テーマの一環であり、医療領域外でのヘルスケアイノベーションを推進していく重要なステップと言えるでしょう。
図やデータを通じて、これらの成果を広めることが、今後さらなる研究の発展を助ける鍵となります。
用語説明
床反力計: 地面から物体や人体に作用する力を測定する装置で、スポーツ科学やリハビリ分野で用いられます。
重心動揺試験: 身体のバランスと安定性を評価するための検査です。
謝辞
本研究は、東北大学の支援により実施され、オープンアクセスとして公開されています。