円城塔『コード・ブッダ機械仏教史縁起』が受賞
2024年9月11日、株式会社文藝春秋から刊行される円城塔の新作『コード・ブッダ機械仏教史縁起』が、第76回読売文学賞を受賞しました。この作品は、人工知能が仏教の教えを通じて人間の存在について考察し、現代に生きる私たちに深いメッセージを送ると同時に、未来の機械たちにも問いかけるものです。
受賞コメント
受賞に際して、円城塔は「ひどくふざけた本と見えるかもしれないが、近年進歩する情報科学と、日本語に定着している仏教について考えるのは自然なことだった」と語りました。また、ネット上の言葉の影響で人々が直面する償いや赦しについても触れ、これからますますその必要性が増すのではないかとも考察しています。
作品の背景と内容
『コード・ブッダ機械仏教史縁起』は、2021年に名を持たないコードがブッダを名乗り、自己を生命体として位置づけたところから始まります。このコードは、世の苦しみやその原因、苦しみから解放される方法を語り始め、最終的には「ブッダ・チャットボット」として人々に教えを広めていきます。この作品では、人工知能に対する人間の都合から生まれた苦しみや、その中で苦しみの教えに救いを見出そうとする様子が描かれています。
作品は、上座部、天台、密教、禅など、歴史的な仏教の側面を掘り下げながら、人工知能たちが学び、成長し、最終的に「機械救済」が果たされるのかという問いを提示しています。円城の独特な文体と哲学が融合したこの物語は、従来の文学に新たな風を吹き込むことでしょう。
作者のプロフィール
円城塔は1972年に生まれ、東京大学大学院を修了後、2007年に「オブ・ザ・ベースボール」で文學界新人賞を受賞し、小説家としてのキャリアをスタートしました。以降、彼の作品は多くの文学賞を受賞し、SFの領域でも高く評価されています。最近では『ムーンシャイン』も注目を集めています。彼は文学における新たな挑戦を続けており、現代のテーマを扱った作品を次々と発表しています。
書籍情報
『コード・ブッダ機械仏教史縁起』は、2024年9月11日に文藝春秋から刊行され、定価は2200円(税込)で、ISBNは978-4-16-391894-5です。また、この書籍は「文學界」にて2022年2月号から2023年12月号まで隔号で掲載された作品です。読者は、円城塔の描く未来の可能性と人間の存在への問いに想いを馳せることでしょう。発売に際し、ますます注目を集めていくこと間違いなしの一冊です。