ウィザス、株主提案が否決 経営陣の財務方針への疑問深まる - ネットキャッシュ積み立ての理由不明確、創業者への適用除外も問題視

ウィザス、株主提案が否決 経営陣の財務方針への疑問深まる



スイス・アジア・ファイナンシャル・サービス(SAFS)が運用する投資ファンド「グローバルESG戦略ファンド(GES)」は、2024年6月27日に開催されたウィザス株式会社(以下「ウィザス」)の第48回定時株主総会において、株主提案を行った。しかし、ウィザスの提案は全て可決され、株主提案は全て否決された。

GESは、ウィザスが巨額のネットキャッシュを抱えながらも、具体的な財務方針を明示していないこと、また、買収防衛策の適用に関して創業者への適用除外を認めている点を問題視している。

特に、GESが提案した「剰余金の分配に関する意思決定機関の削除」(提案第3号)と「買収防衛策の廃止」(提案第10号)は、それぞれ41.93%、41.85%の賛成票を獲得しており、多くの株主がGESの主張に賛同していることが明らかになった。他の株主提案も28.92%から33.82%の賛成票を獲得しており、GES単独の投票数よりもはるかに高い支持率を示した。

GESは、株主提案への支持に感謝するとともに、ウィザス経営陣の透明性と説明責任に対する深刻な懸念を表明している。

経営陣は具体的な財務方針を持たない?



株主総会において、株主からウィザスのネットキャッシュの運用方針について質問が出された際、ウィザスの執行役員・神田隆志氏(事業管理担当)は、高校・大学事業における学費収入が年末に集中することで、期末には現金がピークに達し、その後、翌年度にかけて減少していくため、期末時点では約60億円(2024年3月期末時点で約70億円)、その後、3ヶ月分の売上高に相当する約30億円の流動性を確保する必要があると説明した。

しかし、GESは、ウィザスが30億円の融資を受ければ、資産側に30億円の現金、負債側に30億円の利子負担が発生するものの、ネットキャッシュ(現金・預金から利子負担を差し引いたもの)はゼロになるため、神田氏の説明は70億円のネットキャッシュの必要性を正当化していないと指摘した。

さらに、GESがウィザスがどこまでネットキャッシュを積み上げるつもりなのかについて説明を求めると、神田氏は具体的な数値を示さず、社長の生駒氏は「必要に応じて使用していく考えであり、企業価値向上につなげられるよう活用していく」と曖昧な回答をした。

市場価値の約45%に相当するネットキャッシュを積み上げているにもかかわらず、このような曖昧な説明しかできない状況は、経営陣が株主に対する透明性と説明責任を果たしているとは言えない。

買収防衛策は創業者にも適用される?



経営陣は、提案第12号「定款の一部変更の件(買収防衛策の創業者関係者らへの適用について)」に反対する理由として、買収防衛策は予め取締役会が同意したものには適用されないとした。GESは、現在の取締役会で創業者を含む関係者に対して同意をしている者がいるのか、また、創業者も買収防衛策の対象になるのかを質問した。経営陣は、現時点で取締役会で同意をしている者はいないと回答し、創業者も含め、保有株数を増加させる場合には買収防衛策の適用対象になると明らかにした。

ネットキャッシュ積み立ての理由不明確、創業者への適用除外も問題視



今回の株主総会では、ウィザス経営陣は具体的な財務方針を持たないにもかかわらず、GESの増配提案に反対を表明していたことが確認された。ウィザス経営陣は、資本効率を無視した大幅なネットキャッシュ状態にあることが企業価値及び株主価値を毀損しているという自覚がなく、無自覚にキャッシュを溜め込む企業体質は、東証の要請する「バランスシートをベースとする資本コストや資本収益性を意識した経営」 にも明らかに反する。

また、買収防衛策の適用に関して、創業者関係者への適用除外を認めていることも問題視されている。経営陣は、創業者に対しては買収防衛策を適用しない可能性があることを示唆しており、経営陣が創業者への配慮を優先し、株主の利益を軽視しているのではないかという懸念が生じている。

GESは、ウィザス経営陣に対し、ネットキャッシュの積み立て目的や買収防衛策の適用に関して明確な説明を求め、株主との信頼関係を回復することを強く求めている。

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