『学びの本質』アフリカの知見が導く日本教育の再考

アフリカから学び直す日本の教育

現代の日本社会において、教育はどのように機能し、何を私たちに学ばせているのだろうか。この問いに対する答えを求め、新著『学びの本質』を発表した山田肖子氏は、アフリカのフィールドワークを通じて得た知見から、教育の根本的な意義について考察する。

知識の枠組みを超えて

アフリカに長年滞在してきた山田氏は、現代社会が人間の創造性を抑制している状況に疑問を抱く。知識の細分化や組織的なルールの複雑化は、越境的な発想を阻害し、私たちを「トレーニングされた人間」にしてしまう。特に、人工知能（AI）における学習プロセスと人間の思考のあり方を対比し、人間がどのように制約された環境で教育を受けているのかを浮き彫りにした。

アフリカとの出会い

本書の中で、山田氏は自身のアフリカにおける体験を振り返る。彼女が初めてアフリカに踏み入れた際、現地の人々との出会いは、教育の概念に新たな視点をもたらした。彼女は、「人は何のために学ぶのか？」という根本的な疑問に向き合い、アフリカの伝統的な教育と、植民地時代の影響を受けた制度的なモデルとを対比しながら、学びの意味を再考していく。

教育システムの課題

アフリカの教育システムは、過去の植民地支配の影響を色濃く受けている。特に、英語圏のルールに基づく教育は、現地の文化や知識を重視していない。山田氏は、その不均衡を指摘しながら、学ぶこと自体の目的を問い直す。アフリカにおけるエリート校の教育も、伝統に基づいた知識や技術の重視から外れることが多く、その結果、若者たちが何を学ぶべきなのかが見えにくくなっている。

学びの主体性

「ひとはなぜ学校に行くのか」という問いにも触れ、山田氏はエチオピアやガーナでの調査結果を通じて、現代の教育は変化していると語る。求められる能力や非認知スキルを考察し、自己主導的な学びの重要性を強調する。特に、社会が求める能力に対してどのようにアプローチをするかが、今後の教育の方向性を決定する要因となるだろう。