埼玉県さいたま市の清香株式会社、代表取締役榎本香代子氏は、1920年代から続く伝統的なクリーニング業から新たなビジネスモデルへと転換しました。それが「古着リユース工房inotori」です。近年、クリーニング業は市場規模が大きく減少し、多くの店舗が苦境に立たされています。このような背景の中で、上手く業種転換を果たした例が清香株式会社です。
古着リユース工房inotoriは、自社の持つクリーニング技術と経験を活かし、中古衣服をインターネットで販売する事業を展開。この転換は、単なる新事業立ち上げにとどまらず、クリーニング業のノウハウを再活用し、新たな収益源を形成する試みです。
元々「つるやクリーニング」として1932年に誕生、その後90年にわたり地元で親しまれてきたクリーニング業ですが、四代目の榎本氏が代表を引き継いだ2009年から新たな挑戦が始まりました。特に2014年からは、衣類のリユース事業にも着手し、不要となった衣類を無料で引き取るサービスを開始。これが新しいビジネスの基盤となりました。
しかし、クリーニング業のピークは1992年の8170億円に達していましたが、2022年には2713億円へと市場規模が減少。そこで、業界全体の少子高齢化やコロナ禍で人手不足も深刻化し、2020年には直営店舗を閉店し、2022年には全てのクリーニング事業から撤退することを決断。そして、古着のリユースの仕組みを浸透させるために、クリーニング工場を再生工房へと生まれ変わらせました。
このような業種転換において、ネットを活用することは非常に重要でした。インターネット上での販売により、全国規模での顧客を獲得することが可能になり、経営の安定へとつながっています。また、クリーニング業時代に培った洗浄技術やメンテナンス技術が、古着の再生に利用されている点も特徴です。
さらに、同社はSDGsにも力を入れており、廃棄物削減に向けた取り組みを強化しています。2021年には、さいたま市からのSDGs企業認証を受け、リユース事業を通じて環境問題の解決に貢献しています。そして、古着の普及を目指す中で、特に清潔で状態の良い商品を提供することの重要性を認識。古着に対する抵抗感を軽減し、より多くの人に古着の魅力を伝えることを目標としています。
古着リユース工房inotoriは、まさに顧客のライフスタイルに寄り添った事業展開を行っています。「整備済み」としての価値を付加した古着を提供し、持続可能で安心できる選択肢を提案。それにより、利用者は経済的なメリットを享受しながら、再利用による環境負荷の軽減も実現可能なのです。特に、ユニークなデザインや高品質な素材が魅力のヴィンテージ古着を通じて、消費者は着用する喜びを感じ、自らのライフスタイルを彩ることができるでしょう。清香株式会社は、これからも新たな挑戦を続け、持続可能な未来を築き上げていくことに注力していきます。