2024年版医薬品アクセスインデックスの要点
オランダ・アムステルダムで発表された2024年版医薬品アクセスインデックス(ATMインデックス)が、製薬企業の取り組みを通じて低中所得国への医薬品アクセス改善の状況を明らかにしました。主に、低中所得国で日常的に医療を受けられない患者が多く存在し、特に最貧地域での医療サービスの格差が依然として続いています。
製薬企業の現状
分析対象となった20社の製薬企業では、ノバルティスが初めて首位に立ち、GSKは2位にダウンしました。しかし全体的に見れば、業界のパフォーマンスは2022年と比べて低下しています。特に、インクルーシブ・ビジネスモデルを採用する企業の増加にもかかわらず、その実質的な導入は限られており、医薬品供給のギャップは依然として存在しています。
臨床試験とアクセス計画
世界的人口の約80%が住む低中所得国において、実施された臨床試験のわずか43%であることが報告され、これがアクセス拡大の妨げとなっています。製薬企業は、通常、臨床試験を行う国でのアクセス計画を優先するため、その結果、多くの地域が取り残されています。特に、低所得国では臨床試験がわずか3.5%にとどまり、深刻な問題となっています。
企業の新たな取り組み
医薬品アクセス財団のCEOであるジェイアスリー・K・アイヤー氏は、機会を逃さず、企業が現地のパートナーシップを活用することで、救命医療が必要とされる場所に医薬品を届ける必要があると強調しています。また、具体的なモデルを構築して成功を収めている企業も存在します。特に、ノバルティスやブリストル・マイヤーズ・スクイブ、ファイザーなどが低中所得国における医薬品のアクセスを拡大する取り組みを進めていますが、その透明性は完全とは言えず、さらなる改善が求められます。
持続可能な開発への道
製薬企業は持続可能なアクセスを確保するために、研究開発の強化も必要です。特に低所得層の医療ニーズに応えられる医薬品の開発は喫緊の課題であり、臨床試験の実施を含め、各国での研究開発能力を高めることが急務です。また、任意ライセンス契約を通じた技術移転の促進が鍵となりますが、現状ではこの取り組みも鈍化しているため、全世界でのアクセス向上が急がれています。
日本企業の評価
日本企業の中では武田薬品工業が9位にランクインし、医薬品アクセスに対するガバナンスでも高い評価を得ました。一方、エーザイや第一三共はランキングが下がり、アクセスに関する具体的な取り組みに欠けているとされています。これからの製薬企業には、単に他社に遅れを取らないためだけでなく、医療の公平性の観点からも真剣な取り組みが求められています。
まとめ
2024年版ATMインデックスの結果は、製薬企業が成し遂げるべき目標の明確性を示しています。低中所得国への医薬品アクセスは、多くの人々の健康にとって重要な課題です。今後も業界内での緊密な連携と透明性の確保が、持続可能な解決策につながることが期待されます。医薬品アクセス財団が提供するデータと洞察は、製薬企業が取り組むべき明確なステップを示すガイドラインとなるはずです。