世界20カ国から見る関税の影響と消費者の生活不安
マーケティングデータおよびアナリティクスのリーディングカンパニー、カンター(KANTAR)は、2025年5月2日、20カ国を対象とした消費者センチメントに関する調査結果を発表しました。対象者は10,200人以上で、関税の影響が消費者の生活にどのような影響を及ぼしているか、詳しい傾向が浮き彫りになっています。この調査によると、関税の不安は消費者の生活費に対する懸念を一層高めており、76%の回答者がこれらの貿易政策が自身に及ぼす影響を懸念しています。
このデータによると、消費者が直面している最大の心配事は経済状況とインフレであり、88%が経済への影響を懸念しています。さらに85%がインフレの進行について不安を抱えており、関税が生活費の問題をさらに悪化させる可能性が高いとの見解が示されています。回答者の32%が昨年より家計や支出の管理が難しくなったと感じており、また45%は基本的な支出をするのが困難だと答えています。
もう一つ特筆すべきは、46%の消費者が昨年と比べて景気が悪くなっていると考えている点です。関税が現段階で価格に影響を及ぼし始めていることが伺え、回答者の40%が値下げやキャンペーンを探し、35%がより安い店での購入を選ぶという行動が見られます。これにより、消費者行動が大きく変わっていることがわかります。さらに86%の回答者が物価上昇の影響でライフスタイルや買い物のスタイルを変えざるを得ないと考えており、経済状況が改善する見込みを持つ人はわずか25%に留まっています。
関税問題は、米国の政権に起因するものと捉えられることが多く、71%の消費者がそのように感じています。また、55%は自国政府の対応に好意的で、特にカナダやフランス、メキシコでは報復措置への支持が高まっています。米国外の回答者のうち56%は、関税の引き上げに対抗して現地製品を購入する意向を持っており、この傾向は特に米国の近隣諸国において顕著です。
調査によると、中国の消費者では81%が米国ブランドへの購入意欲の低下を示しています。この影響を受け、企業は消費者の不安をビジネスチャンスに変えることを考える必要があります。カンターのリサーチャー、ジェーン・オスラー氏は、「消費者はピンチを感じており、関税はそれをさらに悪化させている」と述べ、企業にはイノベーションの機会があると指摘しています。新商品や新サービス、価格体系の見直し、関連商品分野の拡大などが求められる中で、消費者との継続的なコミュニケーションも重要です。過去の危機から広告を削減することが将来的な売上に悪影響を及ぼすことが分かっています。
さらに、消費者は価格上昇の理由を企業の過剰請求に求める傾向が強まっており、これに対する企業の適切な価格設定が求められています。実際、「物価危機に乗じて企業が過剰に請求している」と考える消費者は多く、企業はこれに責任を持つ必要があります。
まとめ
カンターの調査結果は、世界中の消費者が共通の不安を抱えていることを示しています。経済の先行きが不透明な中で、企業は市場での競争力を高めるために、消費者のニーズに敏感になり、価格設定や製品戦略を見直す必要があります。消費者との良好な関係を築くことこそが、困難な状況を乗り越える鍵となるでしょう。