2023年7月10日、奈良文化財研究所と大日本印刷(DNP)は、次世代型遺跡博物館の実現に向けた連携研究協定を締結しました。本協定の目的は、文化財保護のデジタルトランスフォーメーションを推進することで、奈良文化財研究所が持つ学術的知見とDNPのデジタル技術を融合させ、訪れる人々が遺跡や文化財についてより深く理解できる仕組みを構築することです。
この協定の中で、両者は奈良文化財研究所が累積したフィールドワークによるデータを、DNPのAI技術とデジタルアーカイブのノウハウを活用して、理解・運用しやすい形に整理、再構築します。具体的には、これまで紙ベースで存在していた調査記録や報告書を、対話型AIガイドを通じて提供し、来訪者が持ち歩くスマートフォンやタブレットで直接質問をすることができるようにするというアイディアです。
また、従来型の遺跡の見学から一歩進んで、訪問者がその場で仮想的に遺構を体験し、歴史的背景や文化的価値に触れることができる対話型ガイドを開発します。このような取り組みは、地域や観光資源の活性化にも寄与することが期待されています。
文化財保護の観点から、奈良文化財研究所とDNPは、デジタル技術を駆使し、埋蔵されている遺跡の魅力を効果的に伝える新たな文化体験を創造することを目指しています。
これまでの文化財研究は、膨大なデータを蓄積してきましたが、来訪者に対してその情報提供が難しいという課題が存在していました。両者の協力により、こうしたデータをAIを用いて整理し、来訪者が自らの興味や理解度に合わせて学ぶことができる環境を整えることが重要です。
今後は平城宮跡を中心に研究が進められ、2026年度内に対話型AIガイドの実証実験が予定されています。そして、2028年には古都奈良の文化財が世界遺産登録30周年を迎えることから、それに合わせたサービスが開始される見込みです。このプロジェクトは、奈良だけでなく日本全国の遺跡や文化財の管理においても新たなモデルとなることが期待されています。
奈良文化財研究所は、文化財の研究を通じて日本の古代国家の歴史を解明することを目的としている独立行政法人です。特に平城宮跡や飛鳥・藤原宮跡の調査に注力しており、その知見を生かして新たなデジタル時代における文化財の保存と利活用に取り組んでいます。DNPは、1876年に設立された広範な事業展開を持つ印刷会社であり、文化財の保存や理解促進のための技術を駆使してきました。このように両者の協力によって、地域の歴史や文化資源の価値を高める新たな道が開かれようとしています。