序論
2024年8月、日本国内で導入された「AI Overviews」は、Google検索結果に表示されるAIによる要約機能です。これにより、ユーザーは検索結果ページ上で直接回答を得ることができ、必ずしもWebサイトを訪れる必要がなくなる「ゼロクリック検索」が増加しています。この動向は、SEOマーケティングにおいて重要な課題となっており、多くのSEO担当者が自然検索におけるクリック率(CTR)の低下について懸念を抱いています。
株式会社PLAN-Bマーケティングパートナーズは、AI Overviewsに伴うCTRの変動を業界別に分析し、その結果を公開しました。これは、各業界のサイト別にクリック数やCTRへの影響を明らかにするための試みです。
調査背景
AI Overviewsが導入されたことによるクリック率の変化は、業界ごとに異なる可能性がある一方で、これまでの研究は通常、全体の平均値に基づいており、業界別や特定のWebサイト単位での効果的なデータが不足しています。そこで本調査では、各業界のクリック率変化にフィーチャーし、デジタルマーケティング領域の今後の方向性を探求しました。
調査概要
調査の期間
調査対象
- - 当社のクライアントサイトから無作為に選ばれた複数サイト
調査方法
Google Search Consoleから取得したデータとAI Overviewsが表示されたかどうかの情報を基に、CTRを以下の3つの観点で算出しました。
1. 対象サイト全体のすべてのクエリにおける、1位獲得時のCTR
2. 2025年4月時点でAI Overviewsが表示されていたクエリに限定した、1位獲得時のCTR
3. 2025年4月時点でAI Overviewsが表示されていなかったクエリに限定した、1位獲得時のCTR
調査結果
全体の傾向
調査の結果、AI Overviewsが表示されたクエリに限った場合、1位の時のクリック率が前年同月比で4.2ポイントの減少が認められました。この落ち込みの背景には、ユーザーが検索結果をクリックせずに満足してしまう「ゼロクリック検索」の増加が影響していると考えられます。
さらに、AI Overviewsが表示されなかったクエリにおいてもCTRは全体的に減少しました。これは、Googleの検索エンジンではなく、生成AIを使用して情報を検索する行動が増えていることや、リッチリザルト(画像やFAQなど)の数が増えてきたことが影響していると分析されています。実際、AI Overviewsが表示されたクエリは、もともとCTRが低い傾向がありました。強調スニペットが出ていたような、あまりクリックされていない情報にAI Overviewsが追加される流れとなったのです。
業界別の影響
特に「エンターテインメント」分野では、AI Overviewsの影響でCTRが大きく下落しました。占い関連の検索が顕著に影響を受けていることがわかりました。その他の業界別データとして、ファッション、インターネットサービス、人材、医療といったカテゴリにおいてもCTRデータが公表されています。これらは、各業界での動きやAI Overviewsの導入による影響を如実に表しています。
総括
この調査を通じて、AI Overviewsの影響が一様ではなく、業界やサイト特有の状況で大きく異なることが見えてきました。特に「ゼロクリック検索」に関する問題が顕在化する中では、企業がAI Overviewsの影響を正確に把握し、必要な最適化策を講じていくことが求められます。過度な焦りを避け、現状を冷静に分析することが、今後のマーケティング戦略には欠かせない要素となるでしょう。この調査を元に、各企業が戦略を見直す良い機会となればと思います。
監修者
株式会社PLAN-Bマーケティングパートナーズ デジタルソリューション事業部 部長 出田 晴之
出田は、PLAN-Bに2018年に入社後、SEOコンサルティング事業を手がける中で多くの企業を支援してきました。特にデジタルマーケティング領域での知見を生かした、実践的な解決策を提供しています。