Starlink Miniによる900km遠隔操縦の成功と建設業DXの未来

1. 画期的な技術の実証

ハイテクインター株式会社と株式会社ジツタ中国、国立研究開発法人土木研究所が共同で行った実証実験が、建設分野でのデジタルトランスフォーメーション（DX）の新たな一歩を踏み出しました。2025年6月12日、茨城県つくば市の建設DX実験フィールドと900㎞離れた北海道沼田町のテストセンターを結び、10台のハイビジョンカメラ映像を用いた建機の遠隔操縦に成功したのです。このプロジェクトは、少子高齢化に伴う作業員不足を解決するための一環とされています。

2. 自動化・遠隔化の必要性

近年、建設業界では人手不足が深刻な問題となり、国土交通省が推進する「i-Construction2.0」において、自動化や遠隔化による作業の省人化が重要視されています。しかし、山間部や災害現場など、通信インフラが整備されていない地域では安定した遠隔操作が難しく、これが遠隔施工技術普及の大きな障壁となっています。特にリアルタイムな映像を複数用いての操縦には、高速かつ安定した通信環境が求められ、従来の手段ではコストや遅延の面から実用化が困難でした。

3. Starlink Miniの活用

この実証実験では、各建機に搭載された4台のカメラ映像を、超低遅延ビデオエンコーダ「LVRC-4000」で高圧縮し、さらに2台の俯瞰カメラ映像を加えた合計10台の映像を、「Starlink Mini」を用いて伝送しました。この新たな取り組みにより、山間部や災害現場などでも効率的な遠隔施工が可能になることを示しています。

特にStarlink Miniは、低コストで導入が可能な低軌道衛星通信装置であり、建設機械の操縦に必要な高速通信環境を実現しました。これにより、困難な地域でも複数の建機を用いた作業が可能になり、今後の建設業界に革命的な変化をもたらすでしょう。

4. 技術的な挑戦

ハイテクインターでは、数々の技術的課題に取り組んできました。まず、遅延の短縮を目指す技術が開発され、遠隔地から建機を操作する際の違和感を抑えました。また、ネットワーク混雑時にも高品質な映像を保つための技術「BAERT」が開発され、これにより安定した映像伝送が可能になりました。さらに、複数のカメラ映像を同時に伝送するためのソリューションも確立され、今後の実用化への道が開かれました。

5. 実証実験の成果

つくば建設DX実験フィールドでは、2つの建機それぞれに4台のハイビジョンカメラが搭載され、「LVRC-4000」で映像を圧縮。さらに俯瞰カメラを加えた合計10台の映像を「Starlink Mini」で約900㎞先のテストセンターに送信しました。オペレーターは遠隔地からも建機を効率的に操縦できたことを確認し、今後の商用化に向けた期待が寄せられています。

6. 今後の展望

今回の実証実験は、山間部や災害現場など通信が難しい地域で複数の建機を効率的に運用できることを示しました。今後は、遠隔施工だけでなく、製造や物流分野でもこの技術が応用されることが期待されます。ハイテクインターはDXの推進に向けて、さらなる技術革新を目指していくでしょう。

本実証実験は、国土交通省SBIR（Small Business Innovation Research）助成制度に基づいて行われ、各関係機関との共同研究の成果としても評価されています。