国内景気、3カ月連続で悪化 - 円安と消費低迷が影を落とす
株式会社帝国データバンクが発表した2024年6月の国内景気動向調査によると、景気DIは前月比0.2ポイント減の43.3となり、3カ月連続で悪化しました。これは2020年5月以来、4年1カ月ぶりのことです。
今回の悪化は、円安によるコスト負担の増加と個人消費の落ち込みが主な要因です。円安は原材料価格の高騰を招き、企業の収益を圧迫しています。また、消費者は節約志向を強め、消費支出を抑制しています。
業界別では、10業界中6業界で悪化しました。特にサービス業や小売業では、個人消費の停滞に加え、円安による原材料価格の高止まりや人件費の増加が重荷となっています。地域別では、10地域中6地域が悪化し、観光地では近県からの旅行客獲得状況によって明暗が分かれています。
規模別では、大企業と小規模企業が3カ月ぶりに改善した一方、中小企業は3カ月連続で悪化しました。中小企業は、宿泊業や飲食店を中心に厳しい状況が続いています。
今後の見通し:横ばい傾向で推移か
今後の国内景気は、横ばい傾向で推移するとみられます。賃上げやボーナス増加による実質賃金の動向がポイントとなります。インバウンド消費の拡大や自動車の挽回生産、世界的な半導体需要の回復などはプラス材料となる可能性がありますが、人件費や物流コストの増加、価格転嫁の遅れ、家計の節約志向といったマイナス要因も懸念されています。
さらに、日本銀行の追加利上げや人手不足の継続も、景気回復を阻む要因となる可能性があります。
業界別:サービス業、小売業が苦戦
サービス業では、インバウンド需要は堅調ですが、国内旅行者の低迷が響き、旅館・ホテルや娯楽サービスは悪化しています。飲食店も外食の利用減少が続いています。
小売業では、節約志向の高まりから飲食料品や繊維製品の販売が低迷しています。一方、中古車相場の上昇や季節需要の高まりなどから、自動車や家電の販売は改善しています。
規模別:中小企業の苦戦が続く
中小企業は、宿泊業や飲食店を中心に厳しい状況が続いています。旅行控えの影響で、旅館・ホテルは3カ月連続で悪化し、飲食店も2カ月連続で落ち込んでいます。食品価格の値上げで包装資材の需要が低迷した出版・印刷業も悪化しています。
地域別:近県からの旅行客獲得が明暗を分ける
地域別では、南関東、北陸など6地域が悪化し、東北など4地域が改善しました。インバウンド消費は好調ですが、近県からの旅行客獲得が各地域の明暗を分ける要因となっています。工事発注の増加はプラス要因となっています。
個人消費の低迷が大きな課題
個人消費DIは2カ月連続で落ち込み、企業からは消費者の節約志向を懸念する声が多数寄せられました。実質賃金は25カ月連続でマイナスとなっており、消費支出の回復には時間がかかる可能性があります。
まとめ
国内景気は、円安と消費低迷の影響で3カ月連続で悪化しました。今後の見通しは横ばい傾向で、日本銀行の追加利上げや人手不足といった課題も重くのしかかっています。個人消費の回復が今後の景気動向を左右する重要なポイントとなるでしょう。