トーン・テレヘンの新作『ゾウのテウニス』が発表
オランダの国民的作家トーン・テレヘンが新たな小説『ゾウのテウニス』を発表しました。彼は2017年に『ハリネズミの願い』が本屋大賞の翻訳小説部門を受賞したことで、日本でも広く知られる存在となりました。本作もまた、彼の特異な視点から描かれた物語であり、特に「多様性」と「共感力」というテーマが印象的です。
『ゾウのテウニス』の概要
『ゾウのテウニス』は、1997年にオランダで初めて出版され、銀の石筆賞を受賞した作品です。この作品では、周囲が人間だらけの中で生きるゾウの少年テウニスの毎日が生き生きと描かれています。彼は、他の子どもたちが簡単にできることができず、自分だけが違うという状況に悩まされています。しかし、同時に彼は他にある特別な自分の特質が役に立つこともあるのです。
人間に囲まれたゾウとその葛藤
物語の中で、テウニスは時々、自分が人間のようだったらどれだけ楽であろうかと考えます。もし世界中の人々がゾウだったら、物事はもっと簡単だったのに、そんな葛藤を抱えています。この感情は、読者にとっても非常に共感を呼ぶものです。
17のエピソードで描かれる日常
『ゾウのテウニス』は、17のエピソードから成り立っています。これらは、ぞうが人間たちと過ごす中での出来事や心の葛藤を描写しています。例えば、学校に行くことや友達との関係、大人との接し方など、様々なシチュエーションがあります。その中でのテウニスの成長や心の変化は、まさに多様性を考える上で、多くの示唆を与えてくれます。また、体験を通じて彼がどのように他者への理解を深めていくのかも見どころの一つです。
著者と翻訳者の背景
トーン・テレヘンは1941年生まれで、オランダ南部の島で育ちました。医学を学んだ後にアフリカで医師をする傍ら、1984年以降は動物を主人公にした多くの作品を発表しています。その独特の視点や心温まるストーリーは、多くの文学賞を受賞することで評価されています。
翻訳を手がける長山さきも、オランダ語の作品を日本に紹介し続けており、本書でもその卓越した言語能力が発揮されています。絵を担当するたまむらさちこも、彼女の独自の視点でテウニスの世界を色彩豊かに描き出しています。
現代におけるメッセージ
『ゾウのテウニス』は、私たちが日常生活の中で常に直面する「違うことの恐れ」や「他者との差をどう受け入れるか」といったテーマを深く掘り下げています。この物語は、読み終えた後も心に残り、私たち自身の生き方について考えさせてくれることでしょう。まさに、今の時代に必要なメッセージを持った作品です。ぜひ、多くの方々に手に取っていただきたい一冊です。
商品情報
- - 作: トーン・テレヘン
- - 訳: 長山さき
- - 絵: たまむらさちこ
- - 定価: 1,650円 (税込)
- - 発売日: 2025年6月18日
- - 判型: 四六判/126ページ/ハードカバー
- - ISBN: 978-4-652-20686-7
- - 発行所: 株式会社理論社
- - 理論社サイト: こちら