里山生態系の危機
2024-10-03 01:31:29

モニタリングサイト1000:里山生態系の危機と生物多様性の減少に関する新報告

モニタリングサイト1000:里山生態系の危機と生物多様性の減少について



日本自然保護協会(NACS-J)と環境省が発表した「モニタリングサイト1000里地調査2005-2022年度とりまとめ報告書」によると、近年、日本の里山において、チョウや鳥類などの生物種が急減しています。特に、評価対象とされた多くの昆虫類や鳥類が個体数を大きく減らしており、その原因として気候変動の影響が挙げられています。

調査概要



この里地調査は、全国325か所の調査サイトを対象に行われ、2005年から2022年の間に集められたデータによって、96種のチョウと106種の鳥類が評価されました。その結果、チョウ類の約1/3(34種)、鳥類の約15%(16種)が10年あたり30%以上の減少を示し、個体数が著しく落ち込んでいます。これには、一般的に見られるセグロセキレイやホトトギス、さらにはオオムラサキやイチモンジセセリ等が含まれています。

生息環境の変化



特に影響を受けているのは、農地や草地、湿地などの開けた環境に生息する生物種です。チョウ類や鳥類、植物の3つのグループに共通する傾向として、開かれた環境での生物多様性が著しく減少しています。さらに、良好な水辺環境の指標種や、草原環境の指標種であるホタル類やカナヘビ類の減少も顕著です。

監視サイトでの生物多様性の損失は、過去の報告書でも認識されていましたが、最近の調査によりその進行が一層深刻になっていることが明らかになりました。

気候変動の影響



2008年から2022年にかけて、日本全体の年平均気温は上昇しており、この気温上昇が里山の生態系と多様性に影響を与えているとされています。特に、気温の高い地域では草原性の種の記録数が減少し、南方系のチョウは増加している傾向があります。このことは、気温依存の生物たちにとって深刻な問題です。

国際的な視点でも、世界自然保護基金の報告によると、過去48年で野生生物の個体数が69%減少しているというデータが示されています。生物多様性を守るための取り組みが必要な状況は、日本でも同様です。

管理放棄と外来種の拡大



調査結果によると、管理の行き届いていない里山が多く見られ、その影響も懸念されています。管理放棄された地域では、特に繁殖期に森林と開けた環境を利用する鳥類の減少が見られます。また、アライグマやイノシシなどの外来種が増加していくことで、生態系にさらなる影響を与えています。このような大きな課題に対して、市民が主体となった保全活動が活発化しています。

市民活動の影響



全国での調査サイトでは、市民31%が実際に保全活動に参加しています。ボランティアによって行われる水田・草原の管理や、調査結果の活用が年々増加しており、多くの場合、地域と連携した活動に繋がっています。成果を活用した結果、特に希少種の保全や生息地の保護が成功している事例も報告されています。

また、こうした活動を続けるには、資金面が課題とされており、調査活動の支援が求められています。行政における助成金の拡充や、地域ごとのよい事例を共有することが不可欠です。

今後の展望



モニタリングサイト1000の調査データは、「生物多様性国家戦略2023-2030」の重点施策に位置付けられ、里地調査の価値が高まっています。しかし、まだまだ解決しなければならない課題は多く、持続可能な保全活動を進めるために市民の参加が増え続けることが必要です。里山の生物多様性を守るためには、科学的なデータを基に、エビデンスに基づく政策立案が重要な要素になるでしょう。

生物多様性の危機を乗り越えるために、私たちそれぞれが具体的な行動を起こし続け、自然との共生を目指すシステムを築いていくことが求められています。


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会社情報

会社名
公益財団法人日本自然保護協会
住所
東京都中央区新川1-16-10ミトヨビル2F
電話番号
03-3553-4101

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