香川用水における水マネジメント技術の実証実験
株式会社ハイドロヴィーナスと国立大学法人岡山大学は、香川県の多目的水路「香川用水」において、「洪水予測&水門管理システム」の実証実験を実施しました。このシステムは、流水発電技術を活用した河川センシングモジュール「ハイドロヴィーナス(HV)」を使用しており、今後の水管理技術の向上が期待されています。
背景と課題
香川県は水量が少ない地域であり、早明浦ダムを水源として効率的な水の配分が求められています。香川用水は、慢性的な水不足を解消するために建設されましたが、様々な課題に直面しています。具体的な課題は以下の通りです。
1.
設置場所とコスト: 高価な観測機器の導入には電源が必要で、設置場所が限られています。
2.
ノウハウの継承: 水門操作は職員の経験に依存しており、データを基にした機械学習の導入が求められています。
3.
人手不足: 増水時の水先位置の把握が難しく、現場判断と管理室との連携が課題です。
ハイドロヴィーナス(HV)の導入によるメリット
今回の実証試験により、HVの導入は次のような利点をもたらします。
- - 安価な機器での発電と計測: HVは現場での発電が可能であり、水位や流量をリアルタイムで計測できます。
- - ごみ取り不要の地設置: 漂流物の影響を受けないため、長期的な運用が可能です。
- - 治水DXの実現: 多点設置と機械学習によるデータ分析が、より効率的な水管理を提供します。
水マネジメント技術の実証
実際の試験では、HVを香川用水に多点設置することにより、流量データをリアルタイムで取得できます。また、AIを用いた水門ナビゲーションを活用することで、配水操作の効率化が図られます。これにより、現場の観測に基づいた適切な水先到達時間の予測が可能になります。
今後の展開
株式会社ハイドロヴィーナスは、治水DX技術を用いてさらなる展開を計画しています。これには、次のような理念が含まれています。
1.
水害の侵攻把握: HVによるリアルタイムデータ取得が水害把握に役立ちます。
2.
非常時の電源供給: 発電能力の向上により、非常時の電源としても利用可能です。
3.
国際展開の可能性: 香川用水で得た技術が、国内外での水管理システムとして応用されることが見込まれます。
開発者の思い
代表取締役の上田剛慈氏は、香川用水の管理者と共に、システムを構築してきた経緯を語り、「現場のニーズに広く応えられる可能性がある」と力強く述べています。また、岡山大学の比江島教授も、今回の技術が水に関わる課題の解決に貢献することを期待しています。
この実証実験は、公益財団法人PwC財団の助成を受けており、今後の技術革新が水管理の未来を変えるとともに、全国的な展開が期待されています。